logo

複素解析学における多価関数と分岐 📂複素解析

複素解析学における多価関数と分岐

定義 1

  1. $X = \mathbb{C}$の要素を$Y$の複数の値に対応させる写像を多価関数multifunctionと呼ぶ。
  2. オープンセット$A \subset \mathbb{C}$で定義された多価関数$g$において、$\alpha \in \mathbb{C}$を囲み$A$の内に位置する閉曲線$\mathscr{C}$が少なくとも一つ存在し、$z-\alpha$が$2\pi$だけ続けて変わった時の値$g(z)$が元の値と異なるようにする$\mathscr{C}$を、$\alpha$を分岐点branch pointと呼ぶ。
  3. $\alpha$の全ての近傍が別の分岐点を含まず、分岐点$\alpha$から始まるただ一つの線分を分岐線branch Cutと呼ぶ。
  4. $g$から作られて分岐線を除いた全ての場所で一つの値だけを持つどんな関数でも、$g$の分岐branchと呼ぶ。

説明

多価関数は複数の値を持つ関数であり、厳密に言うと関数ではない。

例として、複素解析学では対数関数を$\text{Log} z := \log_{\mathbb{R}} |z| + i \arg z$として$0 \in \mathbb{C}$を除いた全ての点で定義する。ここで$\log_{\mathbb{R}}$は元々知っていた対数関数であり、引数argument$\arg$は正の実数軸に対して時計反対回りの回転角を言う。この定義により、関数$\text{Log}$は多価関数$\log$の分岐branchになる。

この場合、$\log$はある$- \pi \le \theta_{0} <\pi$と整数$ n$に対して$\arg z = 2 n \pi + \theta_{0}$であるため、与えられた$z$に対して無限に多くの関数値を持つ。ここで、虚数部の値は半直線$\left\{ b + i0: b \in \left( -\infty , 0 \right] \right\}$を基準に$2 \pi$ごとに変わるが、このような軸を分岐線branch Cutと呼ぶ。通常、このような特性は必要ないため、$n=0$に限定し、これを主分岐principal Branchと呼ぶ。このような場合、引数は$-\pi < \theta \le \pi$に限定され、大文字と小文字を区別して$\text{Arg}$のように表す。

また、この対数の定義をよく見ると、値が$2 \pi$単位で跳ぶような線が必ずしも$\left( -\infty , 0 \right]$である必要はないことがわかる。違う定義が必要であるか、またはただ自分がそうしたい場合でも、どんな方向にでも新しく定義しても構わない。しかし、どのような可能性を考えるにしても、原点$O$だけは必ず含める必要がある。このように全ての分岐線が共有する点を分岐点branch pointと呼ぶ。

特異点の分類がそうであったように、元々関数になり得ないものを無理やり定義して言葉遊びをしていると思われるかもしれない。しかし、例として挙げた関数が対数である以上、このような多価関数を扱うことは非常に真剣な問題であり、複素平面を扱う以上、分岐に関する概念が明確でなければ、分かるようで正確には分からない地獄が続く。可能な限り誤魔化さずに一度にしっかりと勉強するようにしよう。

参考

  • 一般的な多価写像の定義: 実際には’厳密に言うと関数ではない’という説明が不要になる。しかし、複素解析などの場所で使うには、関数の値が集合であると厄介だから、ただの直観で定義を曖昧にした感じがある。

  1. Osborne (1999). Complex variables and their applications: p33, 41. ↩︎