実数体から複素数体を作り出す代数的方法
定理 1
$$ \mathbb{R} [x ] / \left< x^2 + 1 \right> \simeq \mathbb{C} $$
説明
事実だけを見れば明らかで、実数体から複素数体を作り出す過程は非常に美しい。
$\mathbb{R} [x ]$ を $\left< x^2 \right>$ に切るか $\left< x^2 + x \right>$ に切るかに関わらず、要素の形は $ax + b$ の形になるだろうが、わざわざ $\left< x^2 + 1 \right>$ に切る理由がある。少なくとも一度は自分で証明して、この美しさを楽しんでみよう。
証明
$\left( x^2 + 1 \right)$ は $F$ 上の素元であるため、$\left< x^2 + 1 \right>$ は $\mathbb{R} [ x ]$ の極大イデアルであり、したがって$\mathbb{R} [x ] / \left< x^2 + 1 \right>$ は体である。
$\mathbb{R}$ の拡大体 $\mathbb{R} [x ] / \left< x^2 + 1 \right>$ は、その要素として $(ax + b) + \left< x^2 + 1 \right>$ のような剰余類を持つ。これら全ての要素が $a,b \in \mathbb{R}$ とある $\alpha$ に関して $a + b \alpha$ のように表されるため、 $$ \mathbb{R} [x ] / \left< x^2 + 1 \right> = \mathbb{R} ( \alpha ) $$ は単純拡大体である。
具体的に $\alpha := x + \left< x^2 + 1 \right>$ と言えば、 $$ \begin{align*} & \alpha^2 = \left( x + \left< x^2 + 1 \right> \right)^2 \\ \implies& \alpha^2 + 1 = \left( x^2 + \left< x^2 + 1 \right> \right) + \left( 1 + \left< x^2 + 1 \right> \right) \\ \implies& \alpha^2 + 1 = \left( x^2 + 1 \right) + \left< x^2 + 1 \right> = \left< x^2 + 1 \right> = 0 + \left< x^2 + 1 \right> \end{align*} $$ $\alpha$ は $\left( x^2 + 1 \right)$ の零なので、実質的に $\alpha$ が虚数 $i$ と同じ役割を果たし、次が成立する。 $$ \mathbb{R} ( \alpha ) \simeq \mathbb{C} $$
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Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p272. ↩︎