レフシェッツの不動点定理の証明
定理 1
ノルム空間の$(X , \left\| \cdot \right\|)$のスカラー場を$\mathbb{C}$としよう。すると
説明
$\overline{ B ( 0 ; 1 ) } := \left\{ x \in X : \| x \| \le 1 \right\}$は閉単位球を表す。リースの定理によれば、全体の空間が有限次元かを判断するためには、非常に小さな領域だけをチェックすれば良い。通常、有限次元ノルム空間の例を考えるとき、その十分条件や必要条件については考えないので、まさに数学的な定理と言えるだろう。
証明
戦略: 扱いやすい$\mathbb{C}^{n}$から$X$へと単純なホメオモルフィズムを与えて、$\mathbb{C}^{n}$のコンパクト性を$X$へと移す。反方向では$\overline{ B ( 0 ; 1 ) }$のコンパクト性を根拠に、ある有限次元ベクトル空間を作り、それが実際には$X$を含んでいることを示す。
$(\implies)$
$\dim X = n$とすれば、$X$の基底$\left\{ e_{1} , \cdots , e_{n} \right\}$が存在する。関数$f : ( \mathbb{C}^{n} , \| \cdot \|_{1} ) \to (X , \| \cdot \| )$を$f(\lambda_{1} , \cdots , \lambda_{n} ) : = \lambda_{1} e_{1} + \cdots + \lambda_{n} e_{n}$のように定義すれば、$f$は連続な全単射だ。
$\mathbb{C}^{n}$の閉単位球$\overline{ B_{ \| \cdot \|_{1} } ( 0 ; 1 ) } = \left\{ (\lambda_{1} , \cdots , \lambda_{n}) \in \mathbb{C}^{n} \ | \ | \lambda_{1} | + \cdots + | \lambda_{n} | \le 1 \right\}$はハイネ・ボレルの定理によりコンパクトだ。$f$は連続なので、$f \left( \overline{ B_{ \| \cdot \|_{1} } ( 0 ; 1 ) } \right)$もコンパクトだ。
一方で$\| \lambda_{1} e_{1} + \cdots + \lambda_{n} e_{n} \| \le | \lambda_{1} | + \cdots + | \lambda_{n} |$であるから、$\overline{ B ( 0 ; 1 ) } \subset f \left( \overline{ B_{ \| \cdot \|_{1} } ( 0 ; 1 ) } \right)$である。$\overline{ B ( 0 ; 1 ) }$はコンパクト集合$f \left( \overline{ B_{ \| \cdot \|_{1} } ( 0 ; 1 ) } \right)$の閉じた部分集合であるため、コンパクトだ。
$(\impliedby)$
$0 < \varepsilon < 1$としよう。
$\overline{ B ( 0 ; 1 ) }$はコンパクトなので、オープンカバー$\displaystyle \bigcup_{x \in \overline{ B ( 0 ; 1 ) } } { B \left( x ; \varepsilon \right) }$に対して$\displaystyle \overline{ B ( 0 ; 1 ) } \subset \bigcup_{i=1}^{m} B \left( x_{i} ; \varepsilon \right)$を満たす有限のサブカバーが存在する。$M := \text{span} \left\{ x_{1} , \cdots , x_{n} \right\}$としよう。
$\displaystyle \overline{ B ( 0 ; 1 ) } \subset \bigcup_{i=1}^{m} B \left( x_{i} ; \varepsilon \right)$は、$\displaystyle \overline{ B ( 0 ; 1 ) } \subset \bigcup_{ m \in M } B \left( m ; \varepsilon \right)$が成立するということだ。元から$ m \in \text{span} \left\{ x_{1} , \cdots , x_{n} \right\}$だから、球の直径$\varepsilon$をいくら小さく設定しても、この包含関係は継続して成立する。従って、$k \in \mathbb{N}$に対して
$$ \overline{ B ( 0 ; 1 ) } \subset \bigcup_{ m \in M } B \left( m ; \varepsilon \right) \subset \bigcup_{ m \in M } B \left( m ; \varepsilon^2 \right) \subset \cdots \subset \bigcup_{ m \in M } B \left( m ; \varepsilon^k \right) $$
今、ゼロベクトルでない任意の$x \in X$を考えると、ある$y_{k} \in M$、$\displaystyle z_{k} : = B ( 0 ; \varepsilon^k )$に対して
$$ {{ x } \over { \| x \| }} = y_{k} + z_{k} $$
$k \to \infty$の時、$z_{k} \to 0$だから
$$ y_{k} = {{ x } \over { \| x \| }} - z_{k} \to {{ x } \over { \| x \| }} \in \overline{ M } = M $$
つまり$x \in M$だから、$X \subset M$であり、$M \subset X$だから
$$ X = \text{span} \left\{ x_{1} , \cdots , x_{n} \right\} $$
従って、$X$は有限次元ベクトル空間だ。
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一緒に見る
ユークリッド空間からの一般化
リースの定理は、ノルム空間で閉単位球$\overline{B (0;1)}$のコンパクト性を有限の次元の同値条件と指摘する。ユークリッド空間での$k$-セル$[0,1]^{k}$はコンパクトで、閉単位球とのホメオモルフィズムが存在するので、リースの定理は$k$-セルのコンパクト性に対する一般化と見なすことができる。
Kreyszig. (1989). Introductory Functional Analysis with Applications: p80. ↩︎