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擬似ベクトルとは 📂数理物理学

擬似ベクトルとは

説明

物理を勉強していると、擬ベクトルまたは軸ベクトルという言葉に出くわすかもしれない。重要なのは、擬ベクトルに出くわしても、何であるか理解するのが難しいということだ。擬ベクトルを理解せずとも、大学レベルの物理を学ぶのに支障はないと言われているが、ちゃんと説明している教科書を見たことがない。俺はグリフィスの電気磁気学の練習問題で、準ベクトル(Pseudovector) として擬ベクトルに初めて触れた。しかし、練習問題を解くだけでは擬ベクトルが何かを把握するのは難しかった。文章での説明を加える方がよかっただろうと思う。最初は$\mathrm{Pseudo\ vector}$という言葉から来ているが、それで擬ベクトルや軸ベクトルとも呼ばれる。$\mathrm{Pseudo}$の意味は「偽の、偽物の」だ。つまり、本物のベクトルではなく、似ているが少し異なるベクトルという意味だ。

擬ベクトルとは、対称変換をするときに変換の軸の成分は符号が変わらないが、変換しない軸の成分が符号が変わるベクトルを言う

こんな風に書くと理解しにくいかもしれない。簡単に言うと、$xy$平面に対する対称変換をしたときに$x$、$y$成分の符号が変わり、$z$成分の符号はそのままということだ。原点を基準に対称変換をしたときには、どの成分も符号の変化がないということだ。このような特徴を満たすベクトルを擬ベクトルと呼ぶ。最も代表的な例は、二つのベクトルの外積 である。従って、外積で表される物理量、例えば角運動量、トルクなどは全て擬ベクトルである。下の図を見れば簡単に理解できるが、二つのベクトルの外積は対称変換に対して正常に動かない。

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私たちが知っているベクトルは、上の図のように対称変換される。$xy$平面に対して対称変換すると、$z$成分の符号が逆になる。ベクトルはこれらの性質を満たし、これらの性質を満たす場合にのみベクトルと言える。しかし、二つのベクトルの外積はこれらの性質を満たさない。外積もまたベクトルであるにもかかわらず、対称変換前と対称変換後の外積の結果には差がある。

2.jpg

${}^{\prime}$を$xy$平面に対して対称変換されたベクトルとして使おう。そうすると、上の図からわかるように、$(\mathbf{A} \times \mathbf{B})^{\prime} \ne \mathbf{A}^{\prime} \times \mathbf{B}^{\prime}$となる。$xy$平面を基準に対称移動したときに、$z$の符号だけが変わるべきなのに、逆に$z$の符号はそのままで、$x$、$y$の符号が変わったことが確認できる。実際の計算で比較してみると、以下のようになる。

$xy$平面に対して対称

対称変換前対称変換後備考
$\mathbf{A}=(1,1,1)$$\mathbf{a}^{\prime}=(1,1,-1)$$x$、$y$ 成分 符号そのまま
$z$ 成分符号反転
$\mathbf{B}=(2,4,3)$$\mathbf{B}’=(2,4,-3)$$x$、$y$ 成分 符号そのまま
$z$ 成分符号反転
$\mathbf{A}\times \mathbf{B}=(-1,-1,2)$$\mathbf{a}^{\prime}\times \mathbf{B}’=(1,1,2)$$x$、$y$ 成分 符号反転
$z$ 成分符号そのまま

原点に対して対称

対称変換前対称変換後備考
$\mathbf{A}=(1,1,1)$$\mathbf{a}^{\prime}=(-1,-1,-1)$$x$、$y$、$z$ 成分 符号反転
$\mathbf{B}=(2,4,3)$$\mathbf{B}’=(-2,-4,-3)$$x$、$y$、$z$ 成分 符号反転
$\mathbf{A}\times \mathbf{B}=(-1,-1,2)$$\mathbf{a}^{\prime}\times \mathbf{B}’=(-1,-1,2)$$x$、$y$、$z$ 成分 符号そのまま