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等温大気中の高さに応じた気体分子数の公式 📂熱物理学

等温大気中の高さに応じた気体分子数の公式

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温度 $T$が一定だとするとき、高さ $h$での単位体積 $V=1$当たりの気体分子の数を $N(h)$としよう。気体分子の質量が $m$で、重力加速度が $g$であれば、次の式が成り立つ。

$$ N(h) = N(0) e^{- {{mgh} \over {k_{B} T}} } $$

説明

この式は、もともと熱力学ではそれほど目立たないが、導出の二つの方法が全く異なる点が面白い。

導出

微分方程式を使って

高さ $h$から $h + dh$までの空気層を考えてみよう。単位面積内には $N dh$個の気体分子が存在するだろうし、かけられた圧力は $dp = - N dh \cdot mg$で与えられる。

理想気体の方程式

$$ pV = N k_{B} T $$

理想気体の方程式から、体積が $V=1$で固定されているので、以下の式を得る。

$$ p = N k_{B} T \implies dp = k_{B} T d N $$

$dp = - N dh \cdot mg$を代入して整理すると次のようになる。

$$ {{1} \over {N}} dN = - {{mg} \over {k_{B} T}} dh $$

上の分離可能な一階微分方程式を解くと以下のようになる。

$$ \begin{align*} && \ln N(h) - \ln N(0) =& - {{mg} \over {k_{B} T}} h \\ \implies && \ln N(h) =& \ln N(0) + \ln e^{-mgh / k_{B} T} \\ \implies && \ln N(h) =& \ln \left( N(0) e^{-mgh / k_{B} T} \right) \end{align*} $$

対数を解くと、次の式を得る。

$$ N(h) = N(0) e^{ -mgh / k_{B} T } $$

ボルツマン分布を使って

ボルツマン分布

$$ P(\epsilon) \propto e^{ - \epsilon /k_{B} T } $$

気体分子の質量が $m$で、高さが $h$の気体分子の重力ポテンシャルエネルギーは $mgh$である。従って、気体分子のエネルギーが $mgh$である確率は、ボルツマン分布に従って次のようになる。

$$ P(mgh) \propto e^{ -mgh / {k_{B} T} } $$

ここで、$P(mgh)$は高さ $h$で $N(h)$個の気体分子を見つける確率であるから、

$$ N(h) = N(0) e^{ -mgh / k_{B}T } $$


  1. Stephen J. Blundell and Katherine M. Blundell, 熱物理学(Concepts in Thermal Physics, 2版, 2014), p56-57 ↩︎