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複素解析における逆関数定理の証明 📂複素解析

複素解析における逆関数定理の証明

定理 1

関数$f : \mathbb{C} \to \mathbb{C}$が$\alpha$で解析的であり、$f ' (\alpha) \ne 0$を満たすならば、$\mathcal{N} \left( f(\alpha) \right)$の領域において$f^{-1}$が存在する。

説明

$f ' (\alpha) \ne 0$という条件をよく考えよう。

実数関数として考えると、これは関数が増加または減少しているということであり、逆関数の存在条件になる。幾何学的にはスムースsmoothな関数を意味し、急な方向転換や曲がり角がないということを示している。逆関数定理で注意すべき点は、このような条件を満たしても、逆関数自体が普遍的に存在するわけではなく、局所的な限界があるということだ。

証明

$w \in \mathcal{N} (f(\alpha))$に対して方程式$w = f(z)$が一意の解を持つことを示せばよい。


$$ \beta := f(\alpha) \\ g(z) := f(z) - \beta $$とすると、$g(\alpha) = 0$であり$g ' (\alpha) \ne 0$である。つまり、$\alpha$は$g$の単純な零点であり、$|z - \alpha | \le \rho$において$g(z) \ne 0$を満たす$\rho >0$が存在することを意味している。

円$\mathscr{C}: |z - \alpha| = \rho$に対して、 $$ m := \min_{\mathscr{C}} |g(z)| \\ |\gamma| < m $$を満たす$h(z) := -\gamma$を定義する。すると$\mathscr{C}$で次が成り立つ。 $$ g(z) \ne 0 \\ |h(z) | = | - \gamma | = |\gamma| < m \le |g(z)|$$

ローシェの定理:$g$と$h$が単純閉路$\mathscr{C}$で解析的であり、$\mathscr{C}$上で$|h(z)| \le |g(z)|$を満たすならば、$g$と$g + h$は$\mathscr{C}$内部で同じ数の零点を持つ。

ローシェの定理により、$g$と$g + h = g - \gamma$は$\mathscr{C}$内部で同じ数の零点を持つ。

しかし、先に見たように$g$は単純な零点$\alpha$1つしか持っていなかったので、$g(z) - \gamma = 0$を満たす零点も$\mathscr{C}$内部で唯一つである。したがって、方程式$g(z) = \gamma$が$\mathscr{C}$の内部で唯一の解を持つと言える。

今、$w = \beta + \gamma$とすると、 $$ f(z) - \beta = w - \beta $$つまり$w = f(z)$は$\mathscr{C}$の内部$\mathcal{N}(\alpha): |z - \alpha| < \rho$で唯一の解を持つ。

参考文献


  1. Osborne (1999). Complex variables and their applications: p193. ↩︎