行列代数における射影
📂行列代数行列代数における射影
定義
射影 P∈Cm×m が C(P)⊥=N(P) を満たせば、 P を 正射影 であるとする。
説明
射影の性質 Cm=C(P)⊕N(P) に従って、 P は Cm を正確に二つの部分空間 C(P) と N(P) に分割することが分かる。
この分割で条件 N(P)=C(P)⊥ を満たすということは、一次変換 P の零空間 N(P) が列空間 C(P) の直交補空間という意味なので、単なる分割ではなく垂直性が含まれる分割であることが分かる。そのような意味で正射影の定義は非常に妥当であると言える。
一方で一次変換 P が正射影であるための必要十分条件は P がエルミート行列であることである。
その証明は思ったより難しくて乱雑なので、学習する際には事実として覚えておくことをお勧めする。
定理
C(P)⊥=N(P)⟺P=P∗
証明
(⟹)
Cm の正規直交基底が {q1,⋯,qm} のとき、 dimC(P)=r とすると C(P) の正規直交基底は {q1,⋯,qr} と置くことができる。 {q1,⋯,qr} は C(P) の基底なので qi=Pv を満たす何らかの v が存在する。そして、この式に P を掛けると
Pqi=PPv=Pv=qi
一方で Cm=C(P)⊕N(P) なので、 N(P) の正規直交基底は {qr+1,⋯,qm} になるだろう。 {q1,⋯,qr} のベクトルで行列 Q:=[q1⋯qrqr+1⋯qm] を構成すると Q は ユニタリ行列 となり、 PQ を計算すると
PQ==P[q1⋯qrqr+1⋯qm][Pq1⋯PqrPqr+1⋯Pqm]=[q1⋯qr0⋯0]
便宜上 Q:=[q1⋯qr] として、 PQ=[QO] で表すことができる。 上記で得た式に Q∗ を掛けると
Q∗PQ===Q∗qr+1⋮qm[QO][Q∗QOOO][IrOOO]
P に関して整理すると
P=Q[IrOOO]Q∗
となり
P∗=(Q[IrOOO]Q∗)∗=Q[IrOOO]Q∗=P
故に P はエルミート行列である。
(⟸)
Cm=C(P)⊕N(P) より N(P)=C(I−P) である。二つのベクトル Px∈C(P) と (I−P)y∈C(I−P) の内積を計算すると
(Px)∗(I−P)y=====x∗P∗(I−P)yx∗P(I−P)yx∗(P−P2)yx∗(P−P)y0
したがって
C(P)=C(I−P)⊥=N(P)⊥
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