気体運動論によって導かれる理想気体方程式
📂熱物理学気体運動論によって導かれる理想気体方程式
定義[^1]
面積Mに作用する液体の圧力pは、液体が面積Mに垂直に作用する力Fと面積Mの比率で定義される。
p:=MF[N/m2]
式
気体の体積をV、温度をT、分子の数をNとしよう。すると、気体の圧力pは、次の式を満たす。
pV=NkBT
この時、kB=1.3807×10−23J/Kはボルツマン定数Boltzmann constantだ。
説明
上の式は理想気体の方程式と呼ばれる。最初は実験法則から導かれたが、後に以下のように数式的に導かれた。これは、気体の圧力を数式的に整理する過程から得られた結果である。
導出過程を理解するためには、確率と全体に対する比率が同じ概念であることを意識しなければならない。例えば、2つのサイコロを振って出た目の合計が7である場合は、下の表からわかるように、合計36の場合の中で6の場合である。この比率は、2つのサイコロを振って出た目の合計が7である確率367となる。
目の合計 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 合計 |
---|
場合の数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 36 |
導出
単位体積あたりの分子の数をn=N/Vと表記しよう。気体分子の速度分布の確率密度関数は、次のように与えられる。
マックスウェル・ボルツマン分布
f(v)=π4(2kBTm)3/2v2e−mv2/2kBT
f(v)は、気体分子の速度がvである確率、すなわち全分子の数の中で速度がvの分子の比率を意味する。したがって、次の式は単位体積あたりの速度がvの分子の数を意味する。
nf(v)
ここで、特定の方向を固定したとしよう。これをz軸とすると、θは球面座標系の変数(r,θ,ϕ)のθと等しい。

立体角がΩの領域内にある気体分子の比率は、次のようになる。
4πΩ=21sinθ
したがって、次の式は単位体積あたり、立体角0∼Ωの間で運動している、速度がvの分子の数を意味する。
(nf(v))(21sinθ)
次に、次の図のように、面積がAの壁にθの角度で当たる速度がvの分子を考えよう。

分子がt秒後に壁に当たったとする。すると、tの時間内に分子が掃引した領域(濃い部分)を分子の数としてみなせる。平行四辺形の面積は底辺×高さなので、時間tの間に面積Aを打つ分子の数は、次のようになる。
Avtcosθ
したがって、単位面積を単位時間あたりθの角度で打つ速度がvの分子の数は、次のようになる。
(nf(v))(21sinθ)(vcosθ)
力は運動量の変化量であるから、壁と衝突した分子の運動量の変化量を計算してみよう。運動量の変化は、壁に垂直な方向だけで起こる。壁に近づく側を+として、次のようになる。
mvcosθ−(−mvcosθ)=2mvcosθ
したがって、次の式は単位時間あたり、θ方向に運動する速度がvの分子が垂直な壁に与える力になる。
(nf(v))(21sinθ)(vcosθ)(2mvcosθ)
したがって、これをすべての速度v=0∼∞、すべてのθ=0∼π/2に対して積分すると、気体が面積に与える圧力になる。
p=∫v=0∞∫θ=0π/2(nf(v))(21sinθ)(vcosθ)(2mvcosθ)dvdθ=nm∫v=0∞f(v)v2dv∫θ=0π/2cos2θsinθdθ
vに対する積分は、v2の期待値だ。
∫v=0∞f(v)v2dv=⟨v2⟩=m3kBT
θに対する積分は、cosθ=xで置き換えると−sinθdθ=dxとなるので、次のようになる。
∫10−x2dx=−31x310=31
したがって、圧力pは、次のようになる。
p=nmm3kBT31=nkBT
この時、n=N/Vは単位体積あたりの分子数だったので、次の結果を得る。
p=VNkBT⟹pV=NkBT
■