角運動量演算子の交換関係
📂量子力学角運動量演算子の交換関係
公式
各運動量演算子の交換関係は次の通り。
[Lj,Lk]=iℏϵjkℓLℓ(1)
このとき、ϵjkℓはレビ-チビタ記号だ。詳しく書き下すと、
[Lx,Ly]=iℏLz[Ly,Lz]=iℏLx[Lz,Lx]=iℏLy
さらに、L2=Lx2+Ly2+Lz2は各成分と交換可能だ。
[L2,Lx]=[L2,Ly]=[L2,Lz]=0(2)
説明
xとpxはそれぞれ位置演算子と運動量演算子だ。
証明
(1)
下付き文字が循環するので、[Lx, Ly]に対してだけ計算すれば良い。
交換子の性質
[A+B,C]=[A,C]+[B,C]
交換子の性質により次を得る。
[Lx,Ly]=[ypz−zpy,zpx−xpz]=[ypz,zpx−xpz]−[zpy,zpx−xpz]=[ypz,zpx]−[ypz,xpz]−[zpy,zpx]+[zpy,xpz](1)
このとき、異なる座標に対して位置演算子と運動量演算子は交換可能だ。
[x,py]=[x,pz]=[y,px]=[y,pz]=[z,px]=[z,py]=0
また、同じ演算子間の交換子も0だ。したがって(1)を展開したとき、[x,px], [y,py], [z,pz]のこの3つだけが0ではない値を持つことになる。だから0ではない項だけに注目すれば良い。最初の項を展開すると、y[pz,z]pxを除いたすべての項が0だ。第二項を展開すると、すべての項が0だ。第三項を展開すると、すべての項が0だ。第四項を展開すると、x[z,pz]pyを除いたすべての項が0だ。(理解できないなら、自分で展開して解いてみてくれ。)したがって次を得る。
[Lx,Ly]=y[pz,z]p+x[z,pz]py
ここで位置-運動量交換子[x,px]=iℏを使うと、次のように計算される。
[Lx,Ly]=y[pz,z]px−x[z,pz]py=−iℏ(ypx)+iℏ(xpy)=iℏ(xpy−ypx)=iℏLz
同じ論理から次を得る。
[Ly,Lz]=iℏLx,[Lz,Lx]=iℏLy
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(2)
交換子の性質と(1)を使うと、[Lz,Lz]=0なので、次を得る。
[L2,Lz]=[Lx2+Ly2+Lz2,Lz]=[Lx2,Lz]+[Ly2,Lz]+[Lz2,Lz]=Lx[Lx,Lz]+[Lx,Lz]Lx+Ly[Ly,Lz]+[Ly,Lz]Ly=(−iℏLxLy)+(−iℏLyLx)+iℏLyLz+iℏLxLy=0
同様に、次の式が成り立つ。
[L2,Lx]=[L2,Ly]=0
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