同型写像のスミス標準形
要旨 1
自由アーベル群$G$と$G'$は、それぞれ基底$a_{1} , \cdots , a_{n}$と$a_{1}' , \cdots , a_{m}'$を持つとする。関数$f : G \to G'$が準同型である場合、次を満たす唯一の整数の集合$\left\{ \lambda_{ij} \right\} \subset \mathbb{Z}$が存在する。 $$ f \left( a_{j} \right) = \sum_{i=1}^{m} \lambda_{ij} a_{i}' $$ この時、行列$\left( \lambda_{ij} \right) \in \mathbb{Z}^{m \times n}$を($G$と$G'$の基底に関する)$f$の行列と呼ぶ。
自由アーベル群$G$、$G'$のランクがそれぞれ$n,m$であり、$f : G \to G'$が準同型である場合、次のような行列を持つ準同型$g$が存在する。 $$ \begin{bmatrix} d_{1} & 0 & 0 & 0 & \cdots & 0 \\ 0 & \ddots & 0 & 0 & \cdots & 0 \\ 0 & 0 & d_{r} & 0 & \cdots & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & \cdots & 0 \\ \vdots & \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & 0 & 0 & \cdots & 0 \end{bmatrix} \in \mathbb{Z}^{m \times n} $$ ここで、$d_{1} , \cdots, d_{r} \in \mathbb{N}$であり、$d_{1} \mid \cdots \mid d_{r}$、つまり$d_{k}$は$d_{k+1}$の約数divisorでなければならない。
説明
定理で言及された行列は、いわゆるスミス標準形であり、$f$と$\lambda_{ij}$が与えられた場合、$d_{1} , \cdots, d_{r}$はガウスの消去法を用いて求められ、それ自体が$\lambda_{ij}$の線形結合である。スミス標準形を得る過程の行操作は$G'$の基底に、列操作は$G$の基底に影響を与える。
この定理は、実質的に二つの自由群$G, G'$を考える際、すべての$\lambda_{ij}$を見ることなく、$r \le \min \left( m,n \right)$個の$d_{1} , \cdots , d_{r}$だけで十分であり、これらは$G$から$G'$への情報を最も簡潔にまとめたものと見ることができる。
$$ \begin{align*} f(a) =& x + y - z \\ f(b) =& x - y + z \end{align*} $$ 例えば、$f: F[a,b] \to F[x,y,z]$が上記のように定義されている場合、それは自然に準同型であり、$f$の行列は次の通りである。 $$ \begin{bmatrix} 1 & 1 & -1 \\ 1 & -1 & 1 \end{bmatrix} \sim \begin{bmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 2 & 0 \end{bmatrix} $$ 右辺は左辺のスミス標準形である。準同型の行列が左辺のように何でもよい形ではなく、いったんスミス標準形になれば、その形は一意である。
定理
$G$と$G'$の任意の基底を選び、任意の準同型$f \left( a_{j} \right) = \sum_{i=1}^{m} \lambda_{ij} a_{i}'$を定義する。$f$の行列$\left( \lambda_{ij} \right)$は、整数からなる行列の集合$\mathbb{Z}^{m \times n}$に属する。
スミス標準形計算アルゴリズム:$R$が主理想整域である場合、すべての行列$A \in R^{m \times n}$に対して、スミス標準形が一意に存在する。
$\mathbb{Z}$は主理想整域であるため、行列$\left( \lambda_{ij} \right)$に対して、$r$個の対角成分$d_{1} , \cdots , d_{r}$を除くすべての成分が$0$であるスミス標準形が存在する。
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Munkres. (1984). Elements of Algebraic Topology: p55. ↩︎