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最大絶対値定理の証明 📂複素解析

最大絶対値定理の証明

定理1

関数 $f$ が単純閉路 $\mathscr{C}$ 上で連続であり、内部解析的であり、どの点でも定数関数ではないとしよう。そうすると、$\mathscr{C}$ 上で $|f(z)|$ を最大にする$z = z_{0}$ は、$\mathscr{C}$ 上に存在する。

説明

簡単に言うと、複素解析では、閉路内で$|f|$の最大値はその境界に存在するということである。この時点で直感的には捉えられないレベルになるが、なぜかは分からないが本当に不思議だとしか言いようがない。理解のためには、直接さまざまな関数を考えて実際に確認することが良い。

通常、定理は事実として受け入れるのは簡単だが、証明を理解するのは難しいが、最大-最小絶対値定理はむしろその逆である。絶対値が使われるので、実関数の幾何学的な形が頭に浮かんで理解を妨げることがある。百回譲って、何らかの関数があり、経路積分区間の境界に最大絶対値が存在するとしても、最小絶対値も同じ境界に存在するとは想像しにくい。だから、形にあまりこだわらず、上で説明したように直接様々な関数に適用しながら受け入れよう。

次に$\displaystyle {{1} \over {f}}$を考えると、最大絶対値定理により$\displaystyle \left| {{1} \over {f}} \right|$を最大にする点は$\mathscr{C}$上に存在することが当然である。その点は、言い換えれば、$|f|$を最小にする点であるため、最小絶対値定理を導き出すことができる。

最小絶対値定理

関数 $f$ が単純閉路 $\mathscr{C}$ 上で連続であり、内部解析的であり、任意の点で定数関数ではないとする。

$\mathscr{C}$ 内部で$|f(z)| \ne 0$ であれば、$|f(z)|$ を最小にする$z = z_{0}$ は、$\mathscr{C}$ 上に存在する。

証明

$|f(z)|$ が最大になる点$z = z_{0}$が$\mathscr{C}$ 内部に存在すると仮定しよう。すると、実数の密度により$|z - z_{0}| = r$ が$\mathscr{C}$ 内部に存在するような$r>0$ も常に存在する。

一方で、$\left| f(z_{0}) \right|$ は$z = z_{0}$で最大値を持つので、$|f(z_{0} + r e ^{ i \theta } )| \le \left| f(z_{0}) \right|$であるが、任意の点で定数関数ではないので、$|f(z_{0} + r e ^{ i \theta } )| < \left| f(z_{0}) \right|$でなければならない。

ガウスの平均値定理: 関数 $f$ が閉じた $| z - z_{0} | \le r$上で解析的であれば $$f(z_{0}) = {{1} \over {2 \pi}} \int_{0}^{2 \pi} f(z_{0} + r e ^{i \theta } ) d \theta$$

ガウスの平均値定理により、 $$ f(z_{0}) = {{1} \over {2 \pi}} \int_{0}^{2 \pi} f(z_{0} + r e ^{i \theta } ) d \theta $$ 両辺に絶対値を取れば、 $$ \begin{align*} \left| f(z_{0}) \right| =& \left| {{1} \over {2 \pi}} \int_{0}^{2 \pi} f(z_{0} + r e ^{i \theta } ) d \theta \right| \\ \le & {{1} \over {2 \pi}} \int_{0}^{2 \pi} | f(z_{0} + r e ^{i \theta } ) | d \theta \end{align*} $$ しかし、 $$ \begin{align*} \left| f(z_{0}) \right| \le & {{1} \over {2 \pi}} \int_{0}^{2 \pi} | f(z_{0} + r e ^{i \theta } ) | d \theta \\ <& {{1} \over {2 \pi}} \int_{0}^{2 \pi} | f(z_{0}) | d \theta \\ =& \left| f(z_{0}) \right| \end{align*} $$ なので、 $$ \left| f(z_{0}) \right| < \left| f(z_{0}) \right| $$ これは矛盾であるから、$z=z_{0}$は$\mathscr{C}$内部に存在できない。


  1. Osborne (1999). Complex variables and their applications: p95. ↩︎