ミルシュタイン法の導出
📂確率微分方程式ミルシュタイン法の導出
メソッド
dX(t)=f(Xt)dt+g(Xt)dWt,t∈[t0,T]
イートプロセスが、上に記述された自律確率微分方程式の解であるとする。間隔がhで一定の等間隔時点{ti≤T:ti+1=ti+h}i=0Nにおいて、計算されるYi:=Y(ti)は与えられた微分方程式の数値的解である。
Yi+1=Yi+f(Yi)h+g(Yi)hZ+21g(Yi)dydg(Yi)h(Z2−1)
ここで、Zは標準正規分布に従う確率変数である。
この解は強くγ=1次に収束し、弱くβ=1次に収束する。
説明
ミルスタイン2次近似スキームmilstein 2nd-order Approximation Schemeは、オイラー・マルヤマスキームに2次補正項2nd-order correction termを加えて精度を向上させたメソッドだ。式が複雑に見えるが、インデックスが多いためで、少し省略すると次のようにきれいに書ける。
Xt+h=Xt+fth+gthZ+21gtgt’h(Z2−1)
導出
ftgt:=f(Xt):=g(Xt)
便宜上、上記のようにする。f とgは時間 tに独立しているため、df/dt=dg/dt=0であり、f′(x)とすると、xに関するfの導関数を表していることになる。
イートの公式: イートプロセス{Xt}t≥0が与えられているとする。
dXt=udt+vdWt
関数V(t,Xt)=V∈C2([0,∞)×R)に対してYt:=V(t,Xt)とすると、{Yt}もまたイートプロセスであり、次が成り立つ。
dYt==Vtdt+VxdXt+21Vxx(dXt)2(Vt+Vxu+21Vxxv2)dt+VxvdWt
dX(t)=f(Xt)dt+g(Xt)dWt
与えられたイートプロセスでイートの公式を使用してdftを計算してみよう。V=fとすると、イートの公式に従い
dft===df(Xt)(∂t∂ft+∂x∂ftft+21∂x2∂2ftgt2)dt+∂x∂ftgtdWt(0+ft’ft+21ft’’gt2)dt+ft’gtdWt
となり、同様にV=gとしてdgtを計算してみると
dgt===gf(Xt)(∂t∂gt+∂x∂gtft+21∂x2∂2gtgt2)dt+∂x∂gtgtdWt(0+gt’ft+21gt’’gt2)dt+gt’gtdWt
となる。tからsまでの積分形に変えてみると
fs=gs=ft+∫ts(fu’fu+21fu’’gu2)du+∫tsfu’gudWugt+∫ts(gu’fu+21gu’’gu2)du+∫tsgu’gudWu
となる。これをイートプロセスの積分形
Xt+h=Xt+∫tt+hfsds+∫tt+hgsdWs
に代入してみると、次を得る。
Xt+h=Xt+∫tt+h[ft+∫ts(fu’fu+21fu’’gu2)du+∫tsfu’gudWu]ds+∫tt+h[gt+∫ts(gu’fu+21gu’’gu2)du+∫tsgu’gudWu]dWs
イートの掛け算テーブル: dtとdWtの積は以下のようになる。
(dt)2=dtdWt=dWtdt=(dWt)2=000dt
イートの掛け算テーブルにより、赤く塗られた部分はすべて0になる。結果としてftとgtを定数として扱う項と、積分因子dWudWsの二重積分だけが残り、次のように書くことができる。
Xt+h=Xt+ft∫tt+hds+gt∫tt+hdWs+∫tt+h∫tsgugu’dWudWs
最後の項∫tt+h∫tsgugu’dWudWsは、イートの公式の系
∫abWsdWs=21[Wb2−Wa2]−21(b−a)
およびウィーナープロセスの増分の正規性、すなわち
(Wt+h−Wt)∼hN(0,1)
により、標準正規分布に従う確率変数Z∼N(0,1)に関して近似的に次のように計算される。
≈========∫tt+h∫tsgugu’dWudWsgtgt′∫tt+h∫tsdWudWsgtgt′∫tt+h(Ws−Wt)dWsgtgt′[∫tt+hWsdWs−Wt(Wt+h−Wt)]gtgt′[∫tt+hWsdWs−WtWt+h+Wt2]gtgt′[2Wt+h2−2Wt2−2h−WtWt+h+Wt2]21gtgt′[Wt+h2+Wt2−h−2WtWt+h]21gtgt′[(Wt+h−Wt)2−h]21gtgt′[hZ2−h]21gtgt’h(Z2−1)⋯(1)⋯(2)
これを整理すると、次を得る。
Xi+1=Xi+fih+gihZ+21gigi’h(Z2−1)
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