複素解析におけるコーシーの定理の証明
総括 1
$\mathscr{C}$が単純閉路であり、その内側で$f: A \subseteq \mathbb{C} \to \mathbb{C}$が解析的で、$f '$が連続だとする。そうすると、 $$ \int_{\mathscr{C}} f(z) dz = 0 $$
証明
$a \le t \le b$について、 $$ z(t) = x(t) + i y(t) \\ f(z) = u(x,y) + i v(x,y) $$ とすると、$\displaystyle {{dz} \over {dt}} = x ' + i y '$だから、 $$ \begin{align*} f(z)dz =& f(z) ( x ' + i y ' ) dt \\ =& (u + i v ) ( x ' + i y ' ) dt \\ =& (u x ' - v y ' ) + i (v x ' + u y ' ) dt \end{align*} $$ $\displaystyle x ' = {{dx} \over {dt}}$であり、$\displaystyle y ' = {{dy} \over {dt}}$なので、 $$ \begin{align*} \int_{\mathscr{C}} f(z) dz =& \int_{a}^{b} (u x ' - v y ' ) dt + i \int_{a}^{b} (v x ' + u y ' ) dt \\ =& \int_{\mathscr{C}} (u dx - v dy ) + i \int_{\mathscr{C}} (v dx + u dy) \end{align*} $$ ここで、導関数が連続であるという条件が使われる。
グリーンの定理:$P,Q$が連続で、その導関数も連続ならば、 $$\int_{\mathscr{C}} (Pdx + Qdy) = \iint_{S} (Q_{x} - P_{y}) dx dy$$
グリーンの定理により、 $$ \int_{\mathscr{C}} f(z) dz = - \iint_{S} (v_x + u_y) dxdy + i \iint_{S} (u_x - v_y) dxdy $$ 一方で、$u,v$はコーシー・リーマンの方程式を満たす解なので、$u_y = -v_x$であり、$u_x = v_y$だ。だから、 $$ \int_{\mathscr{C}} f(z) dz = 0 $$
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説明
言ってしまえば、特定の条件を満たした場合、定積分を計算する必要が全く無いということだ。「解析学の父」として知られるコーシーだが、その名前が示すように非常に、とても重要な定理だ。見ての通り、関数$f$の条件を満たすのはそれほど難しくないので、多くの場で使うことができる。
実用的であるだけでなく、とてもシンプルなので、数学的な美しさも感じることができる。
微分係数と積分係数を扱う時、厳密ではないが直感的に理解できるように野良解析学を使った。結果的には同じだが、厳密には間違った過程なので注意が必要だ。
もう一つ有用な定理を証明無しで紹介する。
一般化
コーシー・グルサの定理the Cauchy-Goursat theorem
単連結領域 $\mathscr{R}$で、$f$が解析的ならば、$\mathscr{R}$内側の単純閉路 $\mathscr{C}$に対して、 $$ \int_{\mathscr{C}} f(z) dz = 0 $$
フランスの数学者グルサは、$f$の導関数に関する条件をなくすというセンスで一般化を達成した。ファクトとしては、コーシーの定理よりも明らかに有用なので、覚えておくこと。
関連項目
Osborne (1999). Complex variables and their applications: p82. ↩︎