円筒座標系においてr, θを変数として使用すべきではない理由
円柱座標の表記法
円柱座標系は3次元空間の点を$(\rho, \phi, z)$のように表す座標系だ。ここで、
- $\rho$:位置ベクトル$\mathbf{r}$を$xy$面に射影したベクトルの大きさ
- $\phi$:射影したベクトルと$x$軸の間の角度
- $z$:位置ベクトル$\mathbf{r}$を$z$軸に射影したベクトルの大きさ
しかし、円柱座標系の表記法として$(r,\theta, z)$もたまに使われる。これは、円柱座標系が極座標系$(r,\theta)$に高さ$z$が加わっただけと単純に考えられているからだろう。表記法なんて使い方次第だから、どう使っても円柱座標系として意味が通じればいいんじゃないかと言えるかもしれないが、反対に、このように使うことは各文字が持つ意味の統一性を損なうことになる。まず、空間座標系で$r$という変数は原点から該当座標までの直線距離を意味する。だから、位置ベクトルを
$$ \mathbf{r}=r \hat{\mathbf{r}} $$
と表記するわけだ。
極座標、球座標との比較
極座標$(r, \theta)$や球座標$(r, \theta, \phi)$は、図に示されている通り、実際に$r$が原点と座標との間の直線距離を表しているが、円柱座標系を$(r, \theta, z)$で表記する場合、$r$は原点との距離を表すものではなくなる。
円柱座標系での最初の変数は、位置ベクトル$\mathbf{r}$を$xy-$面に射影して得られたベクトルの長さだ。従って、$\rho$または$s$で表記するべきだ($r$ではないということだ)。同様に、$\theta$は位置ベクトル$\mathbf{r}$と座標軸までの角度だ。また、二番目の変数は位置ベクトルと座標軸までの角度ではなく、位置ベクトルを$xy-$面に射影したベクトルと座標軸までの角度だ。従って、$\theta$は$\phi$で表記されるべきだ。これらの理由から、円柱座標系は$(\rho, \phi, z)$で表記すべきで、座標系が変わっても各文字が持つ意味の一貫性を保つことができる。実際に、球面座標系を$(r, \phi, \theta)$と表記した場合でも、ここでの$\phi$と$\theta$の意味自体は変わらず、ただ表記の順序を変えただけの可能性が高い。