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楕円の周囲 📂幾何学

楕円の周囲

ほとんどの資料では二種類の楕円積分がどのように導出されるか、詳細な説明がない。もしあっても間違っている場合が多いから1、**「正確で」そして「詳しい」**内容を自分で書いたよ。ちなみに、ボアスの数理物理学、第3版の内容も間違ってるんだ。

公式

長半径が$a$、短半径が$b$、離心率が$k^{2}$の楕円の周囲長は、次のように計算される。

$$ E=4a\int _{0} ^{{\textstyle \frac{\pi}{2}}} \sqrt{ 1-k^{2}\cos^{2} \theta } d\theta,\quad k^{2}=\frac{a^{2}-b^{2}}{a^{2}} $$

導出

まず、楕円上の点$P=(x,y)$を角度で表してみるよ。ただし、このときの角度は$P$と原点$O$と$x$軸が形成する角度ではない。$P$から引いた垂直線(水平線)が円$x^{2}+y^{2}=a^{2}(x^{2}+y^{2}=b^{2})$と交わる点が$O$と$x$軸と形成する角度だ。下の図を見て。楕円${\textstyle \frac{x^{2}}{a^{2}}}+\frac{y^{2}}{b^{2}}=1 (a>b>0)$と二つの円$x^{2}+y^{2}=a^{2}$、$x^{2}+y^{2}=b^{2}$が描かれてる。

5F20FF7A0.png

上の図から$x=a\cos \theta$であることは自明だ。これを楕円の方程式に代入してみると、次のようだ。

$$ \begin{align*} &&\frac{a^{2}\cos^{2}\theta}{a^{2}}+\frac{y^{2}}{b^{2}}&=1 \\ \implies &&\cos ^{2}\theta+\frac{y^{2}}{b^{2}}&=1 \end{align*} $$

だから$y=b\sin \theta$。それで楕円の周囲長$E$は以下のように計算できる。

$$ \begin{align*} E &= \int _{0} ^{2\pi} \sqrt{ \left( \frac{dx}{d\theta} \right)^{2} + \left( \frac{dy}{d\theta} \right)^{2}}d\theta \\ &= \int _{0} ^{2\pi} \sqrt{ \left( -a\sin \theta \right)^{2} + \left( b\cos \theta \right)^{2}}d\theta \\ &=\int _{0} ^{2\pi} \sqrt{ a^{2}\sin^{2}\theta+ b^{2}\cos^{2} \theta } d\theta \\ &=\int _{0} ^{2\pi} \sqrt{ a^{2}-a^{2}\cos^{2}\theta+ b^{2}\cos^{2} \theta } \\ &=\int _{0} ^{2\pi} a\sqrt{ 1-\frac{a^{2}-b^{2}}{a^{2}}\cos^{2} \theta } d\theta \end{align*} $$

ここで、$\sqrt{\frac{a^{2}-b^{2}}{a^{2}}}(b<a)$は楕円の離心率で、$\epsilon$または$k$と表記される。第1象限の周囲長だけを計算して4倍すると、楕円の最終的な周囲長は以下のようになる。

$$ E=4a\int _{0} ^{{\textstyle \frac{\pi}{2}}} \sqrt{ 1-k^{2}\cos^{2} \theta } d\theta,\quad k^{2}=\frac{a^{2}-b^{2}}{a^{2}} $$

楕円が$y$軸の方により長く、$b>a>0$の条件であれば、下の図のようだ。

2.png

その場合、楕円の周囲長は以下の通り。

$$ E=4b\int _{0} ^{{\textstyle \frac{\pi}{2}}} \sqrt{ 1-k^{2}\sin^{2} \theta } d\theta ,\quad k^{2}=\frac{b^{2}-a^{2} }{b^{2}} $$

二種類の楕円積分

この積分は特に二種類の楕円積分、または完全な二種類の楕円積分と呼ばれ、以下のように記される。

$$ E(k) = \int_{0}^{{\textstyle \frac{\pi}{2}}}\sqrt{ 1-k^{2}\sin^{2} \theta } d\theta $$

計算

この楕円積分は初等関数で表すことができず、数値計算でしか求められない。$k$の値に応じた積分値は以下の通り。

untitled.png $b=1.1547$で、かつ$a=1$ならば、$k=0.5$だ。$E(0.5)=1.351$なので、楕円$ x^{2}+\frac{ y^{2}}{1.1547^{2}}=1$の周囲長は以下の通り。

$$ 4bE(k)=4\times 1.1547 \times 1.351=6.239 $$


  1. ウィキペディアは導出過程がなく、ナムウィキは間違ってる。 ↩︎