実数、複素数、セミノルムに対するハーン・バナッハの定理
📂バナッハ空間実数、複素数、セミノルムに対するハーン・バナッハの定理
実数に関するハーン・バナッハの定理
XはR-ベクトル空間であり、Y⊂Xとする。p:X→RをXの準線形 線形汎関数とする。今、y∗:Y→Rが以下の条件を満たすYのR-線形汎関数であると仮定する。
y∗(y)≤p(y)∀y∈Y
すると、以下の条件を満たすXの線形汎関数x∗:X→Rが存在する。
(a) x∗(y)=y∗(y),∀y∈Y
(b) x∗(x)≤p(x),∀x∈X
説明
R−ベクトル空間とは、体Rに関するベクトル空間のことである。つまり、ベクトル空間のスカラー倍に関する条件(M1)〜(M5)が実数に対して成立するという意味である。同様に、R-線形とは、線形の二つの性質のうちスカラー倍に関する内容が実数に対して成立するという意味である。
X,YがR-ベクトル空間であるため、y∗、x∗が線形であることとR-線形であることは同じ意味である。この部分が混乱する場合は、**R-、C-はこの記事では存在しない文字と考えても、証明を理解する上で問題はない。**後にハーン・バナッハの定理をノルム空間に適用する際には、関数pがノルムに対応する。この定理の証明は省略し、複素数に関するハーン・バナッハの定理の証明に使用する補助定理として利用する。
複素数に関するハーン・バナッハの定理
XはC-ベクトル空間であり、Y⊂Xとする。p:X→Rを以下のように定義された準線形汎関数とする。
p(λx)=∣λ∣p(x),x∈X,λ∈C
そして、y∗:Y→Cが以下の条件を満たすYの線形汎関数であると仮定する。
Re(y∗(y))≤p(y),∀y∈Y
すると、以下の条件を満たすXの線形汎関数x∗:X→Cが存在する。
- x∗(y)=y∗(y),∀y∈Y
- Re(x∗(x))≤p(x),∀x∈X
説明
実数に関する定理と比較した場合、pの値域がRであることは変わらないが、これは上述のようにXがノルム空間の場合、pがノルムに対応するからである。X、YはC-ベクトル空間であり、R⊂Cであるため、R-ベクトル空間である条件も満たされる。すべての複素数に対してベクトル空間の条件(M1)〜(M5)が成立する場合、自動的にすべての実数に対しても成立するからである。同様に、y∗、x∗はC-線形であるため、R−線形である条件も満たされる。
証明
関数ψ:Y→Rを以下のように定義する。
ψ(y)=Re(y∗(y))
すると、ψもYのC-線形汎関数であることが示される。これはReとy∗が線形であるために自明な結果であり、示す過程は非常に簡単なので省略する。ψの定義と(1)により、以下の式が成立する。
ψ(y)=Re(y∗(y))≤∣y∗(y)∣≤p(y)
すると、実数に関するハーン・バナッハの定理により、以下の条件を満たすXのR-線形汎関数Ψ:X→Rが存在する。
Ψ(y)=ψ(y),∀y∈Y
Ψ(x)≤p(x),∀x∈X
そして、新たに関数Φ:X→Cを以下のように定義しよう。最終的な目標は、以下のように定義されたΦが、定理で存在すると言われていたx∗であることを示すことである。
Φ(x):=Ψ(x)−iΨ(ix)
すると、ΦがXの線形汎関数であることが確認できる。ΨがR-線形であるため、加法と実数乗に関しては線形性が自明であるため、Φ(ix)=iΦ(x)のみを確認すればよい。
Φ(ix)===== Ψ(ix)−iΨ(−x) Ψ(ix)+iΨ(x) −i2Ψ(ix)+iΨ(x) i(Ψ(x)−iΨ(ix)) iΦ(x)
Φが**(a)**を満たすことは、以下のように示すことができる。y∈Yとすると、
Φ(y)====== Ψ(y)−iΨ(iy) ψ(y)−iψ(iy) Re(y∗(y))−iRe(y∗(iy)) Re(y∗(y))+Im(−iy∗(iy)) Re(y∗(y))+Im(y∗(y)) y∗(y)
Φが**(b)**を満たすことを示すのはさらに簡単である。
Re(Φ(x))=Ψ(x)≤p(x)
したがって、ΦがXの線形汎関数であり、**(a), (b)**を満たすため、x∗=Φが存在する。
■
セミノルムに関するハーン・バナッハの定理
XはC-ベクトル空間であり、Y⊂Xとする。p:X→RをXのセミノルムとする。そして、y∗:Y→Cが以下の条件を満たすYの線形汎関数であると仮定する。
∣y∗(y)∣≤p(y),∀y∈Y
すると、以下の条件を満たすXの線形汎関数x∗:X→Cが存在する。
x∗(y)=y∗(y),∀y∈Y
∣x∗(x)∣≤p(x),∀x∈X
証明
セミノルムと準線形の定義から、pがセミノルムであれば準線形の条件も自動的に満たされる。
まず、以下の式が成立することは自明である
Re(y∗(y))≤∣y∗(y)∣≤p(y)
したがって、複素数に関するハーン・バナッハの定理により、以下の二つの条件を満たすXの線形汎関数x∗:X→Cが存在する。
x∗(y)=y∗(y)∀y∈Y
Re(x∗(x))≤p(x)∀x∈X
S={λ∈C:∣λ∣=1}とする。すると、
Re(λx∗(x))=≤= Re(λx∗(λx))p(λx) ∣λ∣p(x)=p(x)∀x∈X
この時、固定されたx∈Xに対して∣x∗(x)∣=λx∗(x)を満たすλ∈Sを常に見つけることができる。したがって、xとその特定のλに対して、以下の式が成立する。
∣x∗(x)∣=λx∗(x)=Re(λx∗(x))≤p(x),∀x∈X
Xの線形汎関수x∗が二つの条件を満たすため、証明完了。
■
付録
固定されたxに対してx∗(x)=a+ibとする。λ=c+idとする。λの条件によりc2+d2=1であるため、λ=c+i1−c2である。また、∣x∗(x)∣=a2+b2である。λx∗(x)=(ac−b1−c2)+i(a1−c2+bc)であり、∣x∗(x)∣が非負の実数であるため、
⟹⟹⟹a1−c2+bc=a2(1−c2)=a2=c2= 0 b2c2 (a2+b2)c2 a2+b2a2(2)
便宜上c=a2+b2aとし、d=a2+b2−bとする。すると、(2)とc2+d2=1が成立する。また、∣x∗(x)∣=ac−bd=a2+b2が成立する。したがって、固定されたxに対してx∗(x)=a+ibであれば、λ=a2+b2a−ia2+b2b∈Sに対して∣x∗(x)∣=λx∗(x)が成立する。