傾きの基本定理
定理
$T$を3次元スカラー関数としよう。$a, b$を3次元空間上の任意の点とする。$a$から点$b$への任意の経路に沿った$T$の総変化量は以下の通りである。
$$ \begin{equation} T(b)-T(a) = \int _{a}^{b} (\nabla T) \cdot d\mathbf{l} \label{1} \end{equation} $$
これを勾配の基本定理fundamental theorem for gradientsまたは勾配定理gradients theoremという。
ちなみに、生エビ寿司屋では、定理名に「勾配」が使用されていない場合に限り、「グラディエント」と単独で使用される。
説明
この定理の意味は、$a$から$b$への間、$T$の変化量をずっと加えること$\big( \eqref{1}$の右辺$\big)$と、$b$での値と$a$での値の差$\big( \eqref{1}$の左辺$\big)$が同じであることを意味している。これにより、二つの重要な点が分かる。
$\displaystyle \int _{a}^{b} (\nabla T) \cdot d\mathbf{l}$は経路に関係ない値である。
当然、計算値が$a$と$b$点の$T$値のみに依存しているため、経路は関係ない。始点と終点のみに影響を受ける値だ。例えば、山を登る際、どの経路で山を登ったとしても、頂上に着いた時の私が登った高さは変わらないということだ。
$\displaystyle \oint (\nabla T) \cdot d\mathbf{l}=0$
始点と終点が同じであれば$T(a)-T(a)=0$であり、自然な結果である。ちなみに、$\oint$は閉経路積分であり、積分区間の始点と終点が同じであることを意味する。つまり、$\int _{a}^{a}$と同じ意味だ。例えば、山の中腹のある地点から出発して上り下りして初めの出発点に戻ると、高さの変化がないということだ。勾配の基本定理で絶対に知っておくべき二つのことなので、しっかりと理解しておこう。
証明
点$a$から点$b$までの経路に沿った$T$の微小変化量$dT$を全て加えると、総変化量となる。つまり、
$$ \int _{a} ^{b} dT = T(b)-T(a) $$
しかし、グラディエントの定義により、$dT=(\nabla T) \cdot (d \mathbf{l})$であるため、次が成り立つ。
$$ \int_{a}^{b} (\nabla T) \cdot (d\mathbf{l}) = \int _{a}^{b} dT = T(b)-T(a) $$
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