抽象代数学における核、カーネル
定義
$G, G'$の単位元$e, e'$と準同型写像$\phi : G \to G'$に対して$\left\{ e' \right\}$の原像$ \phi^{-1} [ \left\{ e' \right\} ]$を$\phi$の核kernelといい、$\ker \phi $と書く。
定理
- [1]: $g \in G$に対して$g ( \ker \phi ) = ( \ker \phi ) g$
- [2]: $\ker \phi \triangleleft G$
- [3]: $\ker \phi = \left\{ e \right\}$ $\iff$ $\phi$は単射だ。
- [4]: $\phi$が全射で$\ker \phi = \left\{ e \right\}$ならば、$\phi$は同型写像である。
説明
定理[3]は必要十分条件だが、特に準同型写像が単射であることを示すのに便利に使われる。線形代数学では、零空間は与えられた方程式に対する解集合としてのアイデンティティが強かった。
一方、抽象代数学では、少なくとも群論では、$G$が何であれ、正規部分群として「中心を持つこと」の性質が強い。面白いことに、定理[1]では$\phi$が実際にどのように定義されたか、また$G'$がどのような群であるかさえ気にせず、$G'$は$G$から$\phi$を受け取るだけで、それ以外は無意味だとされている。
証明
[3]
$( \implies )$ $\ker \phi = \left\{ e \right\}$ならば、すべての$g \in G$に対して$\phi ( \left\{ g \right\} )$は正確に$\left\{ g \right\} = g \left\{ e \right\}$にのみ対応するので、$\phi$は単射だ。
$( \impliedby )$ $\phi$が単射であり、$\phi (e) = e'$により、$\ker \phi = \left\{ e \right\}$でなければならない。
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