伊藤の公式とマルチンゲール表現定理
📂確率微分方程式伊藤の公式とマルチンゲール表現定理
定理
確率空間 (Ω,F,P) と フィルトレーション {Ft}t≥0 が与えられて、ウィーナー過程 {Wt}t≥0 が Ft-適応されているとする。
イトーの定理
f∈L2(P) の場合、次を満たす唯一の確率過程 X(t,ω)∈m2(0,T) が存在する。
f(ω)=E(f)+∫0TX(s,ω)dWs
マルチンゲール表現定理
すべての t≥0 に対して、ft∈L2(P) であり、確率 P に対するFt-マルチンゲールであれば、すべての t≥0 に対して次を満たす唯一の確率過程 X(t,ω)∈m2(0,t) が存在する。
ft(ω)=E(f0)+∫0tX(s,ω)dWs
解説
Lp(μ) は、ルベーグ測度 μ の下で ∫Ω∣f∣pdμ<∞ を満たす関数 f を集めた ルベーグ空間 である。与えられた確率空間 (Ω,F,P) では 確率 P もまた測度 として扱われるため、上記の命題では f∈L2(P) は P に関して積分可能な関数であり、従って F の期待値 E(f)=∫ΩfdP のような表記が登場することができた。
イトーの定理は固定された時間 T に関する定理であり、マルチンゲール表現の定理はすべての t≥0 に関するものであることに注意しよう。一方で ft が Ft-マルチンゲール であることは、ft が Ft-適応されつつ次を満たしていることを意味する。
∀t≥s≥0,E(ft∣Fs)=fs
この定義によると、マルチンゲール表現定理で登場する期待値は必ずしも E(ft) である必要はなく、E(f0) でも十分であることが確認できる。