シンク関数のオイラー表現の証明
📂関数シンク関数のオイラー表現の証明
定義
非正規化シンク関数
次の 関数 sinc:R→R をシンク関数sinc functionと言う。
sincx:=⎩⎨⎧xsinx1,if x=0,if x=0
正規化シンク関数
sincx:=⎩⎨⎧πxsinπx1,if x=0,if x=0
定理
オイラー表現
sincx=πxsinπx=n=1∏∞(1−n2x2)
説明
シンク関数とは sinx を x で割った関数で、別名が付けられたほど有用な関数だ。教科の過程でもその名前を知らないだけで極限や連続のパートにしばしば登場する。
本質的に非正規化シンク関数と正規化シンク関数は同じ関数なので、厳密に区別されず、通常その時の用途に合わせた定義が使われると思っていい。
参考として、シンク関数の理想的な積分 は ∫−∞∞xsinxdx=π で求める。
証明
戦略: この証明は直感的ではなくテクニカルな部分が多く理解するのがかなり難しい。しかし、比較的簡単であり、複素解析を使用しないという利点がある証明である。
Part 1. 偶関数 r(x) の周期性
シンク関数 sincx とオイラー表現 f(x):=n=1∏∞(1−n2x2) の比を次のように x に対する関数とする。
r(x):=f(x)sincx
sincx と sinc(x+1) の関係は次の通りだ。
sinc(x+1)===π⋅(x+1)sinπ(x+1)πx−sinπxx+1x(−x+1x)⋅sincx
一方、f(x) と f(x+1) も次のような関係を持つ。
====(−x+1x)f(x)(−x+1x)n=1∏∞(1−n2x2)(−x+1x)(1−x)(2−x)⋯n=2∏∞n21(1+x)(2+x)⋯−(0−x)(1−x)(2−x)⋯n=2∏∞n21(2+x)⋯−f(x+1)
従って、r(x) は 1-周期関数であり、sinc と f が等しいことを示すためには −1/2<x≤1/2 を考慮するだけで十分である。実際に、sincx と f(x) が 偶関数 でありその比で定義される r(x) も偶関数であるため 0<x≤1/2 だけで十分である。
Part 2. 漸化式 (n2−c2)In(c)=(n2−n)In−2(c)
In(c):=∫02πcosntcosctdt
を定義する。それから
I0(0)=∫02πcos0dt=2πI0(2x)=∫02πcos2xtdt=[2xsin2xt]02π=2xsinπx
従って
I0(0)I0(2x)=πxsinπx=sincx
それにより
I0(0)I0(2x)=n=1∏∞(1−n2x2)
を示せば良い。まず In(c) を漸化式として表す。
In(c)=======∫02πcosntcosctdt[c1cosntsinct]02π−∫02πc1ncosn−1t(−sint)sinctdtcn∫02πcosn−1tsintsinctdtcn[c1cosn−1tsint(−cosct)]02π−cn∫02πc1{(n−1)cosn−2t(−sin2t)+cosnt}(−cosct)dtc2n∫02π{(n−1)cosn−2t(cos2t−1)+cosnt}cosctdtc2n∫02π{ncosnt−(n−1)cosn−2t}cosctdtc2n{nIn(c)−(n−1)In−2(c)}
整理すると次のようになる。
(n2−c2)In(c)=(n2−n)In−2(c)
上記の漸化式に c=0 を代入し両辺を割ると新しい漸化式
n2(n2−c2)In(0)In(c)=In−2(0)In−2(c)
を得る。新しい漸化式で右辺が I0(0)I0(c) になるまで繰り返すと
k=1∏m(2k)2(2k)2−c2I2m(0)I2m(c)=I0(0)I0(c)
ここに c=2x を代入すると
==k=1∏m(2k)2(2k)2−(2x)2I2m(0)I2m(2x)I2m(0)I2m(2x)k=1∏mk2k2−x2I0(0)I0(2x)
Part 3. m→∞limIm(0)Im(2x)=1
我々の目標は I0(0)I0(2x)=n=1∏∞(1−n2x2) を示すことなので、m→∞limIm(0)Im(2x)=1 であることを示せば証明は終わる。さて
Im(2x)=∫02πcosmtcos2xtdt
を考えてみよう。Part 1で x∈(0,1/2] だけを仮定できることを示したので t∈[0,1/2] について次の2つの不等式を得る。
cos0>cos2xt⟹cos2xt>cos2t⟹Im(0)>Im(2x)Im(2x)>Im+2(0)
整理すると
Im(0)>Im(2x)>Im+2(0)
であり、両辺を Im(0) で割ると
1>Im(0)Im(2x)>Im(0)Im+2(0)
である。ここで前述の漸化式によれば
(m+2)2Im+2(0)=(m2+3m+2)Im(0)
従って
m→∞limIm(0)Im+2(0)=m→∞limm+2m+1=1
である。サンドイッチ定理 に従って次を得る。
πxsinπx=n=1∏∞(1−n2x2)
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この結果は非常に有用だが、証明自体は他の場所で使えるものではない。一歩一歩理解して習得するよりもこういう証明があるんだなと流すことをお勧めする。
補題