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ヤコビ行列あるいはジャコビ行列とは 📂多変数ベクトル解析

ヤコビ行列あるいはジャコビ行列とは

定義

$D \subset \mathbb{R}^{n}$で定義された多変数ベクトル関数 $\mathbf{f} : D \to \mathbb{R}^{m}$が各スカラー関数 $f_{1} , \cdots , f_{m} : D \to \mathbb{R}$に対して

$$ \mathbf{f} ( x_{1} , \cdots , x_{n} ) : = \begin{bmatrix} f_{1} ( x_{1} , \cdots , x_{n} ) \\ \vdots \\ f_{m} ( x_{1} , \cdots , x_{n} ) \end{bmatrix} $$

と定義されているとしよう。

$$ J := \begin{bmatrix} {{\partial f_{1} } \over {\partial x_{1} }} & \cdots & {{\partial f_{1} } \over {\partial x_{n} }} \\ \vdots & \ddots & \vdots \\ {{\partial f_{m} } \over {\partial x_{1} }} & \cdots & {{\partial f_{m} } \over {\partial x_{n} }} \end{bmatrix} $$

を$\mathbf{f}$のヤコビ行列という。

説明

次のような記法もよく使われる。

$$ J = \dfrac{\partial (f_{1}, \dots f_{m})}{\partial (x_{1}, \dots, x_{n})} $$

$\mathbf{f}$のヤコビ行列は$D \mathbf{f} := J$になるような演算子$D$を定義して表現されることもある。ヤコビ行列という名称は19世紀ドイツの数学者カール・グスタフ・ヤコブ・ヤコビから来ているので、ヤコビ行列と書いて読むのが正しいが、実際には$J$が’ヤコビアン’と読まれることが非常に多い。

全微分とも呼ばれ、多変数ベクトル関数の微分を意味する。したがって、多変数関数にヤコビ行列が存在する場合は、微分可能であるとされ、逆に微分可能な関数 $f : \mathbb{R} \to \mathbb{R}$が$1 \times 1$サイズのヤコビ行列を持つと考えることもできる。簡単に言えば、ヤコビ行列はベクトル関数の微分係数行列である。

通常は極座標とともに解析学で最初に接するもので、

$$ \int_{B} \int_{A} f(x,y) dx dy $$

で使用される直交座標を$x= r \cos \theta$, $y= r \sin \theta$のように変更すると、ご存じの通り

$$ \int_{B} \int_{A} f( r \cos \theta , r \sin \theta ) r dr d \theta $$

として$r$が一つ追加される。これは

$$ \begin{bmatrix} {{\partial x } \over {\partial r }} & {{\partial x } \over {\partial \theta }} \\ {{\partial y } \over {\partial r }} & {{\partial y } \over {\partial \theta }} \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} \cos \theta & \sin \theta \\ -r \sin \theta & r \cos \theta \end{bmatrix} $$

の行列式が$r \cos^2 \theta + r \sin^2 \theta = r$のように求められるからである。同じセンスで、ヤコビ行列は高校で積分の変数置換を行うときすでに接した概念そのものである。例えば、

$$ \int_{0}^{1} ( 27x^3 + 9 x^2 + 3 x ) dx $$

を計算する場合、$3x = y$のような置換を行うと考えてみる。これを$y$が$x$に対する関数$y(x) = 3x$であると見ると、そのヤコビ行列は

$$ \begin{bmatrix} {{\partial 3x } \over {\partial x }} \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 3 \end{bmatrix} $$

となる。これは$3x = y$の両辺をそれぞれの変数で微分して$3dx = dy$を得るのと同じである。

参照