ポテンシャルの多重極展開と双極子モーメント
📂電磁気学ポテンシャルの多重極展開と双極子モーメント
多重展開
離れた場所から見た時、集まった電荷分布は点電荷のように見えるだろう。つまり、電荷分布の総電荷がQだとしたら、非常に遠い場所から見ると、電荷量がQの点電荷が一つあるかのように感じるだろう。これは、電圧を4πϵ01rQと見積もっても大体合ってるということになる。
しかし、総電荷が0の場合、電圧を0で近似するのが正しいかという疑問が生じる。多重展開は、総電荷が0の場合に、どのようにして電圧を近似式で表現するかという解答だ。電圧V(r)をrn1に関する級数で表現することを多重展開という。
位置rにおける電圧は以下の通り。
V(r)=4πϵ01∫
1ρ(r′)dτ′
ここで
=r−r′(
=∣
∣)は分離ベクトルだ。

の大きさを求めるために二つのコサイン法則を用いると、
2=== r2+(r′)2−2rr′cosα r2[1+(rr′)2−2rr′cosα] r2[1+rr′(rr′−2cosα)]
便宜上、角かっこ内の第二項を全体としてϵ=rr′(rr′−2cosα)と置換する。それから次が成り立つ。
=r1+ϵ⟹
1=r1(1+ϵ)−1/2
この時、rが電荷分布から非常に遠い場所であれば、rr′は非常に小さくなり、ϵ≪1が成り立つ。
二項級数
∣x∣<1ならば、
(1+x)α=1+αx+2!α(α−1)x2+3!α(α−1)(α−2)x3+⋯
従って、(1+ϵ)−1/2を二項級数で解くことができる。
1=r1(1+ϵ)−1/2=r1(1−21ϵ+83ϵ2−165ϵ3+⋯)
ϵを元に戻して書くと、
1=r1[1−21rr′(rr′−2cosα)+83(rr′)2(rr′−2cosα)2−165(rr′)3(rr′−2cosα)3+⋯]
これをrr′の各次数に合わせて整理すると、以下のようになる。詳細なプロセスは付録を参照してほしい。
1=r1[1+(rr′)(cosα)+(rr′)2(23cos2α−1)+(rr′)3(25cos2α−3cosα)+⋯]
ここで、各かっこ内は級数n=0∑∞an(rr′)n形で表現できる。この時、それぞれの係数anは以下の通り。
a0=a1=a2=a3=⋮ 1 cosα 23cos2α−1 (25cos2α−3cosα)
これはcosαに関するルジャンドル多項式Pn(cosα)と同じだ。従って、整理すると、
1=r1n=0∑∞(rr′)nPn(cosα)
これを電圧公式(1)に代入し、積分と無関係なrを外に出すと、次を得る。
V(r)=4πϵ01n=0∑∞rn+11∫(r′)nPn(cosα)ρ(r′)dτ′
この級数を再展開すると、
V(r)=4πϵ01[r1∫r′cosαρ(r′)dτ′+r21∫r′cosαρ(r′)dτ′+r31∫(r′)223cos2α−1ρ(r′)dτ′+⋯]
第一項は単極によって生じる電圧、第二項は双極子による電圧、第三項は四極子による電圧だ。n項はそれぞれ2n−1極子項と関連している。
双極子項と双極子モーメント
多重展開式はrの逆数に関する級数なので、通常rが大きいときは単極項が最も大きくなる。monoは単極monopole, モノポールの略だ。
Vmono(r)=4πϵ01rQ
もし集まった電荷の総電荷が0ならば、単極項は0だ。それ以外の場合は、+と−が0になるように組み合わせることができるが、単極項は一つしかできないので、それは不可能だ。従って、この時双極子項が0でなければ、双極子項が最も大きくなる。dipは双極子dipole, ダイポールの略だ。
Vdip(r)=4πϵ01r21∫r′cosαρ(r′)dτ′
ここで、r^⋅r′=r′cosαであるので、
Vdip(r)=4πϵ01r21r^⋅∫r′ρ(r′)dτ′
この積分値はrと無関係で、特に電荷分布の双極子モーメントdipole momentと呼ばれ、pと表される。
p=∫r′ρ(r′)dτ′
双極子モーメントを使って双極子の電圧を簡潔に表すことができる。
Vdip(r)=4πϵ01r2p⋅r^
付録
1−21rr′(rr′−2cosα)+83(rr′)2(rr′−2cosα)2−165(rr′)3(rr′−2cosα)3+⋯
上の式の二乗項、三乗項を展開すると、
1−21rr′(rr′−2cosα)+83(rr′)2[(rr′)2−r4r′cosα+4cos2α]
−165(rr′)3[(rr′)3−3(rr′)22cosα+3(rr′)4cos2α−8cos3α]+⋯
これで、rr′の次数に合わせて整理すると、
1+(rr′)cosα+(rr′)2(−21+23cos2α)+(rr′)3(−23cosα+25cos3α)+⋯
これを整理すると、
1+(rr′)(cosα)+(rr′)2(23cos2α−1)+(rr′)3(25cos2α−3cosα)+⋯