変数分離法を用いた円筒座標系におけるジェット軸に無関係なラプラス方程式の解法
📂数理物理学変数分離法を用いた円筒座標系におけるジェット軸に無関係なラプラス方程式の解法
定理
円柱座標系で円筒対称性cylindrical symmetryがある時のラプラス方程式の一般解は次の通りである。
V(s,ϕ)=A0lns+B0+k=1∑∞(Aksk++Bks−k)(Ckcoskϕ+Dksinkϕ)
証明
ステップ 0
境界条件が円柱座標系で表現しやすい場合は、円柱座標系におけるラプラス方程式を解かなければならない。円柱座標系でのラプラス方程式は以下のようになる。(参考1, 参考2)
∇2V=s1∂s∂(s∂s∂V)+s21∂ϕ2∂2V+∂z2∂2V=0
このとき、ポテンシャルVがzと無関係な関数だとしよう。つまり、他の値は同じでzだけが変わるときに、Vの値は変わらないという仮定である。すると、zによるVの変化量が0であり、これは∂z∂V=0を意味するため、三番目の項が消える。
s1∂s∂(s∂s∂V)+s21∂ϕ2∂2V=0(1)
ポテンシャルV(s,ϕ)が変数分離可能な関数だとしよう。Vがsだけの関数S(s)とϕだけの関数Φ(ϕ)の積でできているという仮定である。V(s,ϕ)=S(s)Φ(ϕ)を(1)に代入すると以下のようになる。
s1dsd(sdsdS)Φ+s21dϕ2d2ΦS=0
両辺にSΦs2を掛けると
Ssdsd(sdsdS)+Φ1dϕ2d2Φ=0
この方程式が成り立つためには、第一項、第二項が両方とも一定である必要がある。なぜなら、sの値が変われば第一項だけが影響を受け、第二項はsと無関係なため影響を受けないからである。それにもかかわらず、二項を足したときに0にならなければならないため、第一項全体が定数であるという結果を得る。同様に、第二項も定数である。
Ssdsd(sdsdS)=C1
Φ1dϕ2d2Φ=C2
(1)の複雑な偏微分方程式が、2つの簡単な常微分方程式に変換された。今度は、各微分方程式を解いてS(s)とΦ(ϕ)を求め、掛け合わせると、求めていたV(s,ϕ)が得られる。C1+C2=0であるため、二つの定数は大きさが同じで符号が反対である。この時、C2は必ず負の定数である。その理由は、C2が正のときに、微分方程式の解がΦ(ϕ)=Aekϕ+Be−kϕの形で出るためである(解法参考)。円柱座標系なので、Φ(ϕ)=Φ(ϕ+2π)を満たさなければならないが、上の式は満たされない。よって、C1は正の定数であり、C2は負の定数である。
Ssdsd(sdsdS)=k2
Φ1dϕ2d2Φ=−k2
ステップ 1
Φ1dϕ2d2Φ=−k2
上の微分方程式の解はΦ(ϕ)=e±ikϕとしてよく知られている。(参考)したがって、一般解は
Φ(ϕ)=Aeikϕ+Be−ikϕ
オイラーの公式eiθ=cosθ+isinθを用いると、以下のように表現できる。
Φ(ϕ)=Acoskϕ+Bsinkϕ
この時、AとBは複素数の定数であり、直前の式のAとBとは別の定数であることに注意しよう。さて、Φ(ϕ)=Φ(ϕ+2π)を満たすか確認しよう。
Φ(ϕ+2π)=Acosk(ϕ+2π)+Bsink(ϕ+2π)=Acos(kϕ+2kπ)+Bsin(kϕ+2kπ)
この時k=0,±1,±2,⋯ならば
Φ(ϕ)=Acos(kϕ)+Bsin(kϕ)=Φ(ϕ)
したがって、解は
Φ(ϕ)=Acoskϕ+Bsinkϕ(k=0,1,2⋯)
負の場合は、正の場合と値が重複するため、正の場合だけを記述すればよい。しかしながら、実はこの時k=0の場合は解に含まれない。なぜなら、k=0の場合に微分方程式を解くと
dϕ2d2Φ=0
⟹dϕdΦ=C
⟹Φ=Cϕ+D
この時のΦは、先に述べた周期性がないためだ。したがって、最終的に得られる解は
Φ(ϕ)=Acoskϕ+Bsinkϕ, (k=1,2⋯)
ステップ 2
Ssdsd(sdsdS)=k2
上の微分方程式を整理すると
s(dsdS+sds2d2S)=k2S
⟹s2ds2d2S+sdsdS−k2S=0
これはオイラーの方程式であり、ここに述べられている方法で解くことができるが、本稿ではもっと簡単に解く。微分方程式の解がsnの形で現れることを利用してS=snを代入すると、
s2(n)(n−1)sn−2+snsn−1−k2sn=0
⟹n(n−1)+n−k2=0
⟹n2−k2=0
∴n=±k
微分方程式の二つの解はskとs−kである。一般解は二つの解の線形結合であり、ステップ 1のkの条件を加えると、
S(s)=Csk+Ds−k,k=1,2,⋯
しかし、重要な点はS(s)はk=0の時の解が存在するということである。k=0の時の微分方程式を解くと、
Ssdsd(sdsdS)=0
⟹dsd(sdsdS)=0
⟹sdsdS=C
⟹dS=sCds
⟹S(s)=Clns+D
したがって、最終的に一般解を示すと、
S(s)=A0lns+B0+k=1∑∞(Aksk+Bks−k)
ステップ 3
ステップ 1 と ステップ 2 の結果を合わせると、ポテンシャルは以下のようになる。
V(s,ϕ)=A0lns+B0+k=1∑∞(Aksk++Bks−k)(Ckcoskϕ+Dksinkϕ)