一般化されたランダムウォーク
定義
確率過程 $\left\{ X_{n} \right\}$ の状態空間が整数の集合 $\left\{ \cdots , -2 , -1, 0 , 1 , 2 , \cdots \right\}$ で、状態 $0$ から始まるとする。次のステップで $1$ だけ減少する確率が$p$、$1$ だけ増加する確率が$(1-p)$ のとき、$\left\{ X_{n} \right\}$ を一般化されたランダムウォークという。
説明
ランダムウォークは確率過程の中でも非常に単純な例で、通常、左右に動く確率を同じにする。一般化されたランダムウォークは、その確率を変えるだけのものだ。単純に考えても、左右に動く確率が同じなら、開始状態 $0$ を中心に行ったり来たりすることが難しくないと想像できる。しかし、一方が大きい場合は、時間が経つにつれてその方向へ発散してしまうだろう。
一方で、状態空間を有限に制限したケースとしては、ギャンブラーの破産問題がある。
定理
$\displaystyle p = {{1} \over {2}}$ ならば状態 $0$ はリカレントで、$\displaystyle p \ne {{1} \over {2}}$ ならば状態 $0$ はトランジェントだ。
証明
$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} p_{00}^{(n)}= \infty$ ならば $0$ はリカレントで、$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} p_{00}^{(n)} < \infty$ ならば $0$ はトランジェントだ。まず、状態 $0$ から奇数回だけ動いて$0$ に戻る確率は確実に $0$ なので $$ p_{00}^{ ( 2n - 1 )} = 0 $$ である。$2n $ 回だけ動いて $0$ に戻ったということは正確に左に $n$ 回、右に $n$ 回動いたという意味なので $$\displaystyle p_{00}^{ ( 2n )} = \binom{2n}{n} p^{n} (1-p)^{n}$$ である。今、 $$\displaystyle p_{00}^{ ( 2n )} = {{ ( 2n )! } \over { ( n! )^2 }} \left( p ( 1 - p ) \right)^{n}$$
これが発散するか収束するかを確認すれば十分だ。
スターリングの近似: $$\lim_{n \to \infty} {{n!} \over { n^{ n + 1/2} e^{- n} \sqrt{ 2 \pi } }} = 1$$
階乗を計算するのが難しく、$n$ は無限大を想定しているので、スターリングの近似を使用する。 $$ \begin{align*} p_{00}^{ ( 2n )} \approx& {{ (2n)^{2n + 1/2} e^{-2n} \sqrt{ 2 \pi } } \over { \left( n^{n + 1/2} e^{-n} \sqrt{ 2 \pi } \right)^{2} }} \left( p ( 1 - p ) \right)^{n} \\ =& {{ (2n)^{2n } \sqrt{2n} } \over { \left( n^{n } \right)^{2} n \sqrt{ 2 \pi } }} \left( p ( 1 - p ) \right)^{n} \\ =& {{ 4^{n} n^{2n} \sqrt{ 2n } } \over { n^{2n} n \sqrt{ 2 \pi } }} \left( p ( 1 - p ) \right)^{n} \\ =& {{ \left( 4 p ( 1 - p ) \right)^{n} } \over { \sqrt{ \pi n } }} \end{align*} $$
ケース 1. $\displaystyle p = {{1} \over {2}}$
p-級数判定法: $\displaystyle \sum _{ n=1 }^{ \infty }{ 1 \over {n^p} }$ が収束するのは $p>1$ と同値である。
p-級数判定法により、$\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} {{ \left( 4 p ( 1 - p ) \right)^{n} } \over { \sqrt{ \pi n } }} = {{1} \over { \sqrt{ \pi } }} \sum_{n=1}^{\infty} {{1} \over { \sqrt{n} } }$ は発散し、状態$0$ はリカレントだ。
ケース 2. $\displaystyle p \ne {{1} \over {2}}$
比判定法: $\displaystyle r = \lim_{n \to \infty} { {|a_{n+1}|} \over {|a_{n}|} }$ において $r<1$ ならば $\displaystyle \sum _{ n=1 }^{ \infty }{ { a }_{ n }}$ は絶対収束し、$r>1$ ならば $\displaystyle \sum _{ n=1 }^{ \infty }{ { a }_{ n }}$ は発散する。
$$\lim_{ n \to \infty } \left| {{ {{ \left( 4 p ( 1 - p ) \right)^{n+1} } \over { \sqrt{ \pi ( n + 1 ) } }} } \over { {{ \left( 4 p ( 1 - p ) \right)^{n} } \over { \sqrt{ \pi n } }} }} \right| = \lim_{n \to \infty } {{ 4 p ( 1 - p ) } \over { \sqrt{ (n+1) / n } }} = 4p (1 - p) < 1$$ よって、比判定法により $$\sum_{n=1}^{\infty} {{ \left( 4 p ( 1 - p ) \right)^{n} } \over { \sqrt{ \pi n } }}$$ は収束し、状態 $0$ はトランジェントだ。
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