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抽象代数学におけるベクトル空間 📂抽象代数

抽象代数学におけるベクトル空間

定義 1

$F$ と アーベル群 $V$ が以下の条件を満たす場合、$V$ を$F$ 上の ベクトル空間vector spaceと呼ぶ。$F$ の元を スカラーscalar、$V$ の元を ベクターvectorと呼ぶ。

  • (i): $\alpha x \in V$
  • (ii): $\alpha ( \beta x) = ( \alpha \beta ) x$
  • (iii): $\alpha (x + y) = \alpha x + \alpha y$
  • (iv): $1 x = x$

添字集合 $I$ に対して、$\left\{ x_{i} \right\}_{i \in I} \subset V$ とする。

  1. ある$\left\{ \alpha_{i} \right\}_{ i \in I} \subset F$ に対して、$\displaystyle \sum_{i \in I} \alpha_{i} x_{i}$ を$\left\{ x_{i} \right\}_{i \in I}$ の 線形結合と呼ぶ。
  2. $V$ の全ての元が$M$ の線形結合で表せる場合、$ \left\{ x_{i} \right\}_{i \in I}$ が$V$ を 生成すると言い、$\text{span} \left\{ x_{i} \right\}_{i \in I} = V$ と表す。
  3. 有限集合$I$ に対して、$\text{span} \left\{ x_{i} \right\}_{i \in I} = V$ を満たす$\left\{ x_{i} \right\}_{i \in I}$ が存在する場合、$V$ は 有限次元であるという。
  4. 全ての$\left\{ x_{i} \right\}_{i \in I}$ に対して $\displaystyle \sum_{i \in I} \alpha_{i} x_{i} = 0$ を満たすのが $\alpha_{i} = 0$ のみの場合、$\left\{ x_{i} \right\}_{i \in I}$ は$F$ 上で 線形独立であるという。そうでない場合は 線形従属である。
  5. $\text{span} \left\{ x_{i} \right\}_{i \in I} = V$ の時、$\left\{ x_{i} \right\}_{i \in I}$ が線形独立であれば、その$\left\{ x_{i} \right\}_{i \in I}$ を$V$ の基底と呼ぶ。
  6. 有限次元ベクトル空間$V$ の基底を$M$ とする場合、$M$ の基数を$V$ の次元と呼び、$\dim V$ と表す。

説明

通常、線形代数ですでに馴染みのある概念で、‘代数’という名前が付いているものの抽象代数で説明できないわけではない。簡単な例として、多項式関数の環 $\mathbb{R} [ x ]$ は$1 , x , \cdots , x^{n}$ を基底とするベクトル空間であることが容易に確認できる。

参照

以下の文書で話される$F$-ベクトルスペースは、基本的に上記のベクトル空間と変わらない。ただ、見方が少し異なっており、線形代数学のベクトル空間は直感的なユークリッド空間の抽象化で、抽象代数学のベクトル空間はそれを真の意味での’代数’として持ち込んでいると考えられる。

逆に、$R$-モジュールは、$F$-ベクトルスペースの スカラー体 $F$ を スカラー環 $R$ に一般化することで、その意味があるとされている。従って、$F$-ベクトルスペースの歴史や意味に無関心な命名であり、そのアイデンティティを示している。グループ $G$ の観点から見れば、環 $R$ へ新しい操作 $\mu$ が追加されているため、それも 加群加群の一種である。


  1. Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p274~280. ↩︎