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熱力学におけるエントロピーとは何か 📂熱物理学

熱力学におけるエントロピーとは何か

定義

次の式を満たす$S$をエントロピーentropyと定義する。

$$ dS = {{ \delta Q_{\text{rev} } } \over { T }} $$

説明

エントロピーは「無秩序さ」を示す物理量で、数式だけ見てなぜ無秩序さを意味するのか理解するのは難しい。「部屋を散らかす」や「コップにインクを落とす」など、非専門家のための説明は「無秩序さ」を説明できても$dS = \dfrac{\delta Q_{\text{rev}} }{ T }$を説明できない。

この概念を受け入れるためには、エントロピーは導出されたものではなく「定義」であると考える必要がある。「なぜこんなに定義したの?」と思ったら、簡単な視覚的説明が役立つだろう。以下の二つの状況を考えてみよう:

  • ケース1. システムの温度が低い場合

    20180809\_175434.png

    冷えた空間に熱エネルギー$Q$を加えると想像してみよう。これは、低い温度$T_{1}$での熱エネルギーの変化$\delta Q$を与えることである。このとき、エントロピーの変化を$d S_{1}$としよう。

  • ケース2. システムの温度が高い場合

    20180809\_175444.png

    すでに熱い空間に**ケース1.**と同様に熱エネルギー$Q$をさらに加えると想像してみよう。これは、高い温度$T_{2}$での熱エネルギーの変化$\delta Q$を与えることである。このとき、エントロピーの変化を$d S_{2}$としよう。

投入されたエネルギーは熱力学の第二法則に従って、低い温度の場所へ拡散していくだろう。青かった空間**ケース1.は説明し難いような濁った色に変わり、空間ケース2.**は最初より少し赤くなっただけだ。この色の変化の差は、投入されたエネルギーによって空間がどれだけ変わったかの差を示しており、$d S_{1} > d S_{2}$を意味する。数式的に見れば$T_{1} < T_{2}$なので、次のようになる。

$$ {{1} \over {T_{1} }} > {{1} \over {T_{2}}} $$

そうすると、エントロピーの定義によって次の式が自然な結論として分かる。

$$ d S_{1} = {{\delta Q_{\text{rev} }} \over {T_{1} }} > {{\delta Q_{\text{rev} }} \over {T_{2}}} = d S_{2} $$

熱力学的に表せば、「**ケース1.のエントロピーの増加はケース2.**よりも大きい」となる。部屋を散らかすことで表せば、「同じいたずらをしても、散らかっている部屋より整っている部屋の方が散らかりやすい」となる。インクを落とすことで表せば、「同じ量を入れても、濁った水より清水の方が汚れやすい」となる。