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電気フラックスとガウスの法則 📂電磁気学

電気フラックスとガウスの法則

定義1

S\mathcal Sを通過する電場 E\mathbf{E}フラックスを以下のように定義する。

ΦESEda \Phi_{E} \equiv \int_{\mathcal S} \mathbf{E} \cdot d\mathbf{a}

これから、S\mathcal{S}をある閉じた曲面としよう。閉じた曲面内の総電荷量をQinQ_{\text{in}}としよう。すると、次の式が成り立つ。

SEda=1ϵ0Qin \oint_{\mathcal{S}} \mathbf{E} \cdot d\mathbf{a} = \frac{1}{\epsilon_{0}}Q_{\mathrm{in}}

これをガウスの法則という。

フラックス

フラックスとは、ある物理量が特定の面に対して垂直に通過する量をいう。例えば、管を流れる水やガスは、その管の垂直面に対して平行に流れるため、流れる量自体がフラックスと同じである。しかし、電場は管に沿って流れない。そのため、電場のフラックスは内積を使って求める。内積を取ると、平行でない成分はすべて0として計算されるからである。

1.jpg

ある面を通過する電場線が上の図のようだとしよう。ここで私たちが知りたいのは、面に垂直に通過する程度がどれくらいかということだ。みんな知っての通り、ベクトルは分解が可能だ。電場線を面に垂直な方向と平行な方向に分解しよう。すると下の図のようになる。 2.jpg 私たちの目的は、図で示されたE\mathbf{E}_\parallelを求めることである。面ベクトルdad\mathrm{a}の大きさは11であるため、内積を使って以下のような式で求めることができる。

E=Eda \mathbf{E}_\parallel=\mathbf{E} \cdot d\mathbf{a}

上で行った方法に従って、与えられた面に対する電場のフラックスを以下のように定義する。

ΦESEda \Phi_{E} \equiv \int_{\mathcal S} \mathbf{E} \cdot d\mathbf{a}

ガウスの法則(積分形)

ガウスの法則の核心は、閉じた曲面の外にある電荷はフラックスに何の影響も与えないということである。

3.jpg

図を見れば、閉じた曲面を外から貫通する電場線によるフラックスは、面の両端で2回計算されることがわかる。閉じた曲面における面ベクトルの方向は常に面の外側に定義される。両端の面ベクトル方向が正反対であるため、両端を通過するフラックスの大きさは同じで、方向は違う。この2つを加えると00になるため、閉じた曲面の外の電荷はフラックスに影響を与えない。

導出

これから、点電荷QQが半径rrの球の中心にあるとしよう。このとき、球面を通過する電場E\mathbf{E}のフラックスを求めてみよう。クーロンの法則で電場を表すと、次のようになる。

ΦE=Eda=02π0π(14πϵ0qr2r^)(r2sinθdθdϕr^)=14πϵ0Q02πdϕ0πsinθdθ=14πϵ0Q(2π)(2)=1ϵ0Q \begin{align*} \Phi_{E} &= \oint \mathbf{E} \cdot d\mathbf{a} \\ &= \int_{0}^{2\pi} \int_{0}^\pi \left( \frac{1}{4\pi\epsilon_{0} q r^{2}} \hat{\mathbf{r}} \right) \cdot \left( r^{2}\sin\theta d\theta d \phi \hat{\mathbf{r}} \right) \\ &= \frac{1}{4\pi\epsilon_{0}}Q \int_{0}^{2\pi}d\phi \int_{0}^\pi \sin\theta d\theta \\ &= \frac{1}{4\pi\epsilon_{0}}Q (2\pi)(2) \\ &= \frac{1}{\epsilon_{0}}Q \end{align*}

結果を見ると、半径rrに対して無関係であることがわかる。これは球の表面積がr2r^{2}に比例し、電場がr2r^{2}に反比例するからである。お互いに打ち消しあって、結果に影響を与えない。曲面内に複数の点電荷がある場合は、単純に加えればよい。複数の点電荷による電場が重ね合わせの原理に従って単純に加えられるからである。例えば、点電荷Q1Q_{1}Q2Q_{2}があり、Q=Q1+Q2Q=Q_{1}+Q_{2}とすると、結果は下のようになる。

Eda=(i=12Ei)da=(E1+E2)da=E1da+E2da=1ϵ0Q1+1ϵ0Q2=1ϵ0(Q1+Q2)=1ϵ0Q \begin{align*} \oint \mathbf{E} \cdot d\mathbf{a} &= \oint \left( \sum \limits_{i=1}^{2} \mathbf{E}_{i} \right) \cdot d\mathbf{a} \\ &= \oint \left( \mathbf{E}_{1} + \mathbf{E}_{2} \right) \cdot d\mathbf{a} \\ &= \oint \mathbf{E}_{1} \cdot d\mathbf{a} + \oint \mathbf{E}_{2} \cdot d\mathbf{a} \\ &= \frac{1}{\epsilon_{0}}Q_{1}+\frac{1}{\epsilon_{0}}Q_{2} \\ &= \frac{1}{\epsilon_{0}}(Q_{1}+Q_{2})=\frac{1}{\epsilon_{0}}Q \end{align*}

当然、点電荷が3つ以上の場合も結果は同じである。したがって、閉じた曲面内の総電荷量をQinQ_{\text{in}}とし、各電荷が作る電場の合計である総電場をE\mathbf{E}とすると、次の式が成り立つ。

Eda=1ϵ0Qin \begin{equation} \oint \mathbf{E} \cdot d\mathbf{a} = \dfrac{1}{\epsilon_{0}}Q_{\text{in}} \label{1} \end{equation}

微分形

発散定理

Vvdτ=Svda \int_\mathcal{V} \nabla \cdot \mathbf{v} d\tau = \oint _{S} \mathbf{v} \cdot d \mathbf{a}

(1)\eqref{1}に発散定理を適用すると、以下の式を得る。

VEdτ=SEda=1ϵ0Qin \int_{\mathcal{V}} \nabla \cdot \mathbf{E} d\tau = \oint _{\mathcal{S}} \mathbf{E} \cdot d \mathbf{a} = \frac{1}{\epsilon_{0}}Q_{\text{in}}

このとき、単位体積当たりの電荷量を体積電荷密度ρ\rhoとしよう。すると、体積内部の総電荷量QinQ_\mathrm{in}ρ\rhoの関係は以下のようになる。

Qin=Vρdτ Q_\mathrm{in}=\int_\mathcal{V} \rho d\tau

上の2つの式の結果を組み合わせると、以下のようになる。

VEdτ=V1ϵ0ρdτ    E=1ϵ0ρ \begin{align*} && \int_\mathcal{V} \nabla \cdot \mathbf{E} d\tau &= \int_\mathcal{V} \frac{1}{\epsilon_{0}}\rho d\tau \\ \implies && \nabla \cdot \mathbf{E} &= \frac{1}{\epsilon_{0}}\rho \end{align*}

これをガウスの法則の微分形といい、マクスウェル方程式のひとつである。


  1. David J. Griffiths, 基礎電磁気学(Introduction to Electrodynamics, 金晋昇訳)(4th Edition). 2014, p73-77 ↩︎