距離空間の定義
📂距離空間距離空間の定義
定義
集合 set X に対して、関数 d:X×X→[0,∞)が x,y,z∈X について以下の条件を満たす場合、d を距離metricと呼び、(X,d)を距離空間metric spaceという。距離が自明の場合、簡単に X と記されることもある。
d(x,y)=0⟺x=y
d(x,y)=d(y,x)
d(x,y)+d(y,z)≥d(x,z)
説明
線型代数学でノルムの概念を理解したなら、大きさや距離が直感的にのみ定義される必要はないことがわかるだろう。以下の3つの例は特に Rn上で定義され、前述のように、線型代数学で見たノルムと大きく変わらない。これは、ノルム ∥⋅∥がどのように定義されても常に距離 d(x,y):=∥x−y∥ を定義できるためで、ある種のノルムがあればそれに対応する距離も存在する。
例
x=(x1,x2,⋯,xn) そして y=(y1,y2,⋯,yn) とする。
ユークリッド距離: d(x,y)=i=1∑n(xi−yi)2
タクシーキャブ距離: d′(x,y)=i=1∑n∣xi−yi∣
マックス距離: d′′(x,y)=max{∣xi−yi∣}i=1n
基本的な解析学では、主に R1 を扱い、ユークリッド距離だけが使われると考えても良い。解析学に限って言えば、距離空間について詳細に学ぶ必要はなく、実数集合 R を距離空間 (R,d)として受け入れるだけで十分だ。以下の二つの例は、ユークリッド空間を超えた距離の概念だ。
離散距離:
d0(x,y)=δxy={1,0, x=y x=y
離散距離はクロネッカーのデルタを使用し、二つの要素が同じかどうかだけで判断する。三角不等式を満たしているかは、場合分けをして簡単に証明できる。
積分距離:
ρ(f,g)=∫ab∣f(x)−g(x)∣dx
積分距離は連続関数の集合 C[a,b] で定義できる距離だ。二つの関数のグラフが完全に同じであれば、その値は 0 になる。

図で示すと、実線で囲まれた部分がちょうど ρ(f,g) になる。
これらの定義から、metric は従来の意味での‘距離’よりも、二つの間の‘距離感’として理解する方が適していることがわかる。完全に同じものは必ず 0 であるため、‘無限大にどれだけ近いか’ではなく、‘0 からどれだけ遠いか’が重要だ。より抽象的な思考のために、距離が大きくなるほど‘場所’が遠くなるという直感的な考えから離れよう。