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コンパクト作用空間 📂バナッハ空間

コンパクト作用空間

定義1

$X$と$Y$をノルム空間として、$T : X \to Y$をこれらの空間間の作用素とする。すべての有界な部分集合$M \subset X$に対して、作用素$T$のイメージ$T(M)$が事前コンパクトであるならば、$T$をコンパクト作用素compact operatorと言う。

説明

$T(M)$が事前コンパクトprecompact, relatively compactとは、そのクロージャ$\overline{T(M)}$がコンパクトであることを意味する。言い換えれば、コンパクト作用素とは有界集合を事前コンパクトにマッピングする作用素である。

コンパクト作用素の研究の必要性は、以下のような積分方程式の解法から始まった。 $$ (T - \lambda I)x(s) = y(s) \qquad \text{where} \qquad Tx(s) = \int_{a}^{b} k(s, t)x(t) dt. $$ ここで$\lambda \in \mathbb{C}$は定数、$y$と核$k$は与えられた関数である。未知の数、すなわち見つけたい関数は$x$である。ダビッド・ヒルベルトは、上の積分方程式の解法可能性solvabilityが$T$の積分形ではなく、$T$のコンパクト性にのみ依存することを発見した。

compact operatorは、completely continuous operatorとも呼ばれる。この名前は以下の定理から付けられたものである。(a)から(b)は一般に成立しないが、(b)が反例である。

定理

連続性に関する定理: $X$と$Y$をノルム空間とする。

(a) すべてのコンパクト線形作用素$T : X \to Y$は有界である。つまり連続である。

(b) もし$X$が無限次元ならば、恒等作用素$I : X \to X$は(連続だが)コンパクトではない。

証明

(a)

単位球$U = \left\{ x \in X : \left\| x \right\| = 1 \right\}$は有界である。$T$をコンパクトと仮定すると、コンパクト作用素の定義により$\overline{T(U)}$がコンパクトである。コンパクトならば有界であり、以下の補助定理により、$\overline{T(U)}$が有界であることは、すべての$Tx \in \overline{T(U)}$に対して$\left\| Tx \right\| \le c$が成立する$c$が存在することと同じである。

補助定理

以下の2つの命題は等価である。

  • ノルム空間$X$の部分集合$M \subset X$が有界である。
  • 正の数$c \gt 0$が存在し、すべての$x \in M$に対して$\left\| x \right\| \le c$が成立する。

従って、

$$ \sup\limits_{x \in U} \left\| Tx \right\| \lt \infty $$

(b)

$\dim X = \infty$と仮定する。閉球$B = \left\{ x \in X : \left\| x \right\| \le 1 \right\}$は有界である。$\overline{I(B)} = \overline{B}$はリースの定理によりコンパクトであることができない。従って、$I : X \to X$はコンパクト作用素ではない。

リースの定理

ノルム空間$X$に対して、

$X$は有限次元である。$\iff$ $\overline{ B ( 0 ; 1 ) }$はコンパクトである。

性質

コンパクト条件

詳しくはこちら

$X$と$Y$をノルム空間として、$T : X \to Y$を線形作用素とする。それでは、以下の2つの命題は同じである。

  1. $T$がコンパクト作用素である。
  2. $T$が「$X$のすべての有界数列」を「収束する部分数列を持つ$Y$の数列」にマッピングする。

ベクトル空間

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コンパクト線形作用素の集合は、ベクトル空間を形成する。


  1. Erwin Kreyszig, Introductory Functional Analysis with Applications (1989), p405-406 ↩︎