線形変換のテンソル積
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有限次元のベクトル空間V1,V2,W1,W2と線形変換ϕ1:V1→W1、ϕ2:V2→W2が与えられたとする。そうすると、以下のような双線形変換を考えることができる。
V1×V2→W1⊗W2
(v1,v2)↦ϕ1(v1)⊗ϕ2(v2)
ϕ1,ϕ2が線形変換であり、この関数が双線形であることは、積ベクトルの定義によって容易にわかる。
ϕ1(αv1+βv1′)⊗ϕ2(v2)=(αϕ1(v1)+βϕ1(v1′))⊗ϕ2(v2)=αϕ1(v1)⊗ϕ2(v2)+βϕ1(v1′)⊗ϕ2(v2)
ϕ1(v1)⊗ϕ2(αw1+βw1′)=ϕ1(v1)⊗(αϕ2(w1)+βϕ2(w1′))=αϕ1(v1)⊗ϕ2(w1)+βϕ1(v1)⊗ϕ2(w1′)
テンソル積の普遍性質
ベクトル空間V1,…,Vr、Wに対して、次のような多重線形変換ϕが与えられたとする。
ϕ:V1×⋯×Vr→W
そうすると、次を満たす線形変換ψが一意に存在する。
ψ:V1⊗⋯⊗Vr→W
ϕ(v1,…,vr)=ψ(v1⊗⋯⊗vr),∀vi∈Vi,∀i
そうすると、上の定理に従って、一意の線形変換V1⊗V2→W1⊗W2が存在する。
定義
2つの線形変換ϕ1:V1→W1、ϕ2:V2→W2のテンソル積tensor product of two linear transformationsϕ1⊗ϕ2を次のように定義する。
ϕ1⊗ϕ2:V1⊗V2(v1⊗v2)→W1⊗W2↦ϕ1(v1)⊗ϕ2(v2),∀v1∈V1,∀v2∈V2
(ϕ1⊗ϕ2)(v1⊗v2)=ϕ1(v1)⊗ϕ2(v2)
一般化
1≤i≤nに対して、線形変換ϕi:Vi→Wiたちのテンソル積とは、次を満たす一意の線形変換である。
ϕ1⊗⋯⊗ϕn:V1⊗⋯⊗Vn→W1⊗⋯⊗Wn
(ϕ1⊗⋯⊗ϕn)(v1⊗⋯⊗vn)=ϕ1(v1)⊗⋯⊗ϕn(vn),∀vi∈Vi
性質
線形作用素ϕ1,ϕ2:V→Vとψ1,ψ2:W→Wに対して、二つのテンソル積(ϕ1⊗ψ1)、(ϕ2⊗ψ2)の合成は次のようになる。
(ϕ1⊗ψ1)∘(ϕ2⊗ψ2)=(ϕ1∘ϕ2)⊗(ψ1∘ψ2)
一般化
ϕ1⊗⋯⊗(αϕk+βψk)⊗⋯⊗ϕn=α(ϕ1⊗⋯⊗ϕk⊗⋯⊗ϕn)+β(ϕ1⊗⋯⊗ψk⊗⋯⊗ϕn)
(ϕ1⊗⋯⊗ϕn)∘(ψ1⊗⋯⊗ψn)=(ϕ1∘ψ1)⊗⋯⊗(ϕn∘ψn)
証明
線形性
定義(1)と積ベクトルの定義を使えば容易に示せる。ϕ:V→V′、ψ1,ψ2:W→W′、そしてv∈V,w∈Wについて、
[ϕ⊗(αψ1+βψ2)](v⊗w)=ϕ(v)⊗[(αψ1+βψ2)(w)]=ϕ(v)⊗[αψ1(w)+βψ2(w)]=α[ϕ(v)⊗ψ1(w)]+β[ϕ(v)⊗ψ2(w)]=[α(ϕ⊗ψ1)](v⊗w)+[β(ϕ⊗ψ2)](v⊗w)=[α(ϕ⊗ψ1)+β(ϕ⊗ψ2)](v⊗w)
⟹ϕ⊗(αψ1+βψ2)=α(ϕ⊗ψ1)+β(ϕ⊗ψ2)
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合成
定義(1)と積ベクトルの定義を使えば容易に計算できる。v∈Vとw∈Wについて、
[(ϕ2⊗ψ2)∘(ϕ1⊗ψ1)](v⊗w)=(ϕ2⊗ψ2)[(ϕ1⊗ψ1)(v⊗w)]=(ϕ2⊗ψ2)(ϕ1(v)⊗ψ1(w))=[ϕ2(ϕ1(v))]⊗[ψ2(ψ1(w))]=[(ϕ2∘ϕ1)(v)]⊗[(ψ2∘ψ1)(w)]=[(ϕ2∘ϕ1)⊗(ψ2∘ψ1)](v⊗w)
⟹(ϕ2⊗ψ2)∘(ϕ1⊗ψ1)=(ϕ2∘ϕ1)⊗(ψ2∘ψ1)
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