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直和の性質 📂線形代数

直和の性質

定理1

$W_{1}, W_{2}, \dots, W_{k}$を有限次元ベクトル空間$V$の部分空間とする。次の命題はすべて等価である。

  1. $V = W_{1} \oplus W_{2} \oplus \cdots \oplus W_{k}$
  2. $V = \sum\limits_{i=1}^{k}W_{i}$であり、任意のベクトル$v_{i} \in W_{i}(1 \le i \le k)$に対して、$v_{1} + \cdots v_{k} = 0$ならば、全ての$i$に対して$v_{i} = 0$である。
  3. すべての$v \in V$は一意に$v = v_{1} + \cdots + v_{k} (v_{i} \in W_{i})$の形で表される。
  4. $\gamma_{i}$が$W_{i}$の順序基底ならば、$\gamma_{1} \cup \cdots \cup \gamma_{k}$が$V$の順序基底である。
  5. $\gamma_{1} \cup \cdots \cup \gamma_{k}$が$V$の順序基底となるような$W_{i}$の順序基底$\gamma_{i}$が存在する。

説明

$V$の二つの部分空間$W_{1}, W_{2}$に対して、

  • $W_{1} + W_{2}$は$W_{1}, W_{2}$のである。
  • $W_{1} \oplus W_{2}$は$W_{1}, W_{2}$の直和である。

証明

  • $1. \implies 2.$

    1を仮定する。すると$V = \sum\limits_{i=1}^{k}W_{i}$である。$v_{i} + \cdots v_{k} = 0 (v_{i} \in W_{i})$としよう。すると、ある$j$に対して、 $$ -v_{j} = \sum\limits_{i\ne j}v_{i} \in \sum\limits_{i\ne j}W_{i} $$ しかし、$v_{j} \in W_{j}$なので、次を得る。 $$ -v_{j} \in W_{j} \cap \sum\limits_{i\ne j}W_{i} = \left\{ 0 \right\} $$ したがって、全ての$i$に対して、$v_{i} = 0$である。

  • $2. \implies 3.$

    2を仮定する。$v \in V$としよう。すると、仮定により$v = v_{1} + \cdots + v_{k}$である$v_{i} \in W_{i}$が存在する。別の表現$v = w_{1} + \cdots + w_{k}\ (w_{i} \in W_{i})$が存在すると仮定する。すると、次を得る。 $$ 0 = v - v = (v_{1} - w_{1}) + \cdots + (v_{k} - w_{k}) $$ したがって、$v_{i} - w_{i} \in W_{i}$であり、2を仮定したので、全ての$i$に対して$v_{i} - w_{i} = 0$である。したがって、$v = v_{1} + \cdots + v_{k}$は唯一の表現である。

  • $3. \implies 4.$

    3を仮定する。$\gamma_{i}$を$W_{i}$の順序基底とする。仮定により$V = \sum\limits_{i=1}^{k}W_{i}$である。これは$\gamma_{1} \cup \cdots \cup \gamma_{k}$が$V$を生成することを意味する。今、この集合が線形独立であることを示すために、$v_{ij} \in \gamma_{j}$であり、スカラー$a_{ij}$に対して$\sum\limits_{i,j} a_{ij} v_{ij} = 0$ $(j = 1,\dots,m_{i},\ i=1,\dots,k)$としよう。各$i$に対して、 $$ w_{i} = \sum_{j=1}^{m_{i}}a_{ij}v_{j} $$ としよう。全ての$i$に対して$0 \in W_{i}$なので、$0 = 0 + \cdots + 0 = w_{1} + \cdots + w_{k}$である。すると、仮定により全ての$i$に対して$w_{i} = 0$である。 $$ 0 = w_{i} = \sum_{j=1}^{m_{i}}a_{ij}v_{j} $$ しかし、各$\gamma_{i}$は基底であるため、線形独立である。したがって、全ての$i,j$に対して$a_{ij} = 0$である。したがって、$\gamma_{1} \cup \cdots \cup \gamma_{k}$は線形独立であり、$V$の基底である。

  • $4. \implies 5.$

    自明である。

  • $5. \implies 1.$

    5を仮定する。各$i$に対して、$\gamma_{1} \cup \cdots \cup \gamma_{k}$が$V$の順序基底となるような$W_{i}$の順序基底として$\gamma_{i}$を考える。すると、和集合の生成と生成の和が同じなので、 $$ \begin{align*} V &= \span(\gamma_{1} \cup \cdots \cup \gamma_{k}) \\ &= \span(\gamma_{1}) + \cdots + \span(\gamma_{k}) \\ &= \sum\limits_{i=1}^{k}W_{i} \end{align*} $$


  1. Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p276 ↩︎