ベクトル空間の不変部分空間
概要
$\beta = v_{1}, \dots, v_{k}$を線形変換 $T : V \to V$の固有ベクトルの集合としよう。ならば、$T$が$\span{\beta}$を$\span{\beta}$にマッピングすることがわかる。このように自分自身を自分自身にマッピングする部分空間を不変部分空間と定義する。
定義1
$V$をベクトル空間、$T : V \to V$を線形変換としよう。部分空間 $W$が次の条件を満たすならば、$W$を**$T$-不変部分空間**$T$-invariant subspaceという。
$$ T(W) \subset W $$
つまり、
$$ T(v) \in W\quad \forall v \in W $$
の$W$を$T$-不変部分空間という。
説明
線形変換$T : V \to V$において、次のものが$T$-不変の部分空間である。
1と2は自明である。全ての部分集合$A \subset V$に対して、$T(A) \subset R(T)$なので$R(T)$は$T$-不変である。$0 \in N(T)$なので、$T(N(T)) \subset N(T)$である。$T(\lambda x) = \lambda (\lambda x)$なので、$T(E_{\lambda}) \subset E_{\lambda}$である。
$W$が$T : V \to V$の不変部分空間ならば、制限写像 $T|_{W} : W \to W$を自然に定義できる。この場合、$T|_{W}$は$T$の性質を受け継ぎ、次の定理は$T$と$T|_{W}$の間の一つの関係性を示している。簡単に言えば、$T|_{W}$の特性多項式は$T$の特性多項式の因数である。この結論自体は別の定理の系としても得られる。
定理
$V$を$n$次元のベクトル空間、$T : V \to V$を線形変換、$W$を$T$-不変としよう。すると、$T|_{W}$の特性多項式は$T$の特性多項式を割る。
証明
$W$の順序基底 $\gamma = \left\{ v_{1} ,\dots, v_{k} \right\}$を一つ選ぶ。そして、これを$V$の順序基底 $\beta = \left\{ v_{1}, \dots, v_{k}, v_{k+1}, \dots, v_{n} \right\}$に拡張しよう。$A = \begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta}$、$B_{1} = \begin{bmatrix} T|_{W} \end{bmatrix}_{\gamma}$とする。すると、行列 $A$を次のようなブロック行列で表せる。
$$ A = \begin{bmatrix} B_{1} & B_{2} \\ O & B_{3} \end{bmatrix} $$
$f(t)$を$T$の特性多項式、$g(t)$を$T|_{W}$の特性多項式とする。すると、ブロック行列の行列式の公式によって次が得られる。($I$は行列計算が可能な適切な次元の単位行列である。)
$$ f(t) = \det(A-tI) = \det \begin{bmatrix} B_{1}-tI & B_{2} \\ O & B_{3}-tI \end{bmatrix} = g(t) \det(B_{3}-tI) $$
従って、$g(t)$は$f(t)$を割る。
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参照
Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p313-315 ↩︎