行列の基本空間
📂行列代数行列の基本空間
説明
行列Aが与えられたとしよう。すると、我々はAに対して次の6つの空間を考えることができる。
Aの行空間, ATの行空間
Aの列空間, ATの列空間
Aの零空間, ATの零空間
しかし、Aの行ベクトルはATの列ベクトルと同じで、Aの列ベクトルはATの行ベクトルと同じなので、Aの行空間とATの列空間が同じである。同じ理由で、Aの列空間とATの行空間も同じなので、我々は次の4つの行列を考えることができる。
Aの行空間, Aの列空間
Aの零空間, ATの零空間
これら4つの空間はまとめて、行列Aの基本空間fundamental spacesと呼ばれる。
定理1
任意の行列Aに対して、
rank(A)=rank(AT)
証明
Aの行空間とATの列空間が同じなので、ランクの定義により、
rank(A)=dim(R(A))=dim(C(AT))=rank(AT)
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定理2
Aをm×nの行列としよう。
(a) Aの零空間とAの行空間はRnで互いに直交補空間である。
N(A)⊕R(A)=Rn
(b) ATの零空間とAの列空間はRmで互いに直交補空間である。
N(AT)⊕C(A)=Rm
証明
戦略:定義を使って直接演繹する。 (a)の証明のみ紹介する。(b)の証明も本質的には同じである。
まずN(A)=R(A)⊥であることを示そう。x∈N(A)とすると、零空間の定義により次のようになる。
Ax=0
両辺にy∈Rnと内積を取ると次のようになる。
yT(Ax)=0
行列の積の結合法則により(yTA)x=0であり、転置行列の性質により(ATy)Tx=0なので、直交の定義により次のようになる。
ATy⊥x
すると直交補空間の定義により次のようになる。
x∈R(A)⊥
この内容をまとめるとx∈N(A)⟹x∈R(A)⊥になるので次の結果を得る。
N(A)⊂R(A)⊥
この過程を逆方向に繰り返せばN(A)⊃R(A)⊥を得ることができるので、次の結果を得る。
N(A)=R(A)⊥
両辺に⊥を取ると次のようになる。
N(A)⊥=R(A)
これらは両方ともRnの部分空間なので、次を得る。
N(A)⊕R(A)=Rn
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