バインガルテン・マップ
定義1
$M$を曲面、$p \in M$を曲面上の点とする。次のように定義される写像$L : T_{p}M \to \mathbb{R}^{3}$をバインガルテン・マップと呼ぶ。
$$ L (\mathbf{X}) = - \mathbf{X}\mathbf{n} $$
この時、$\mathbf{X} \in T_{p}M$は接ベクトルで、$\mathbf{n}$は単位法線、$\mathbf{X}\mathbf{n}$は$\mathbf{n}$の方向微分である。
性質
$L$は$L : T_{p}M \to T_{p}M$の線形変換である。
$\left\{ \mathbf{x}_{1}, \mathbf{x}_{2} \right\}$が$T_{p}M$の基底であるから、$L(\mathbf{x}_{k}) = \sum\limits_{l}{L^{l}}_{k}\mathbf{x}_{l}$とすると、次が成り立つ。
$${L^{l}}_{k} = \sum_{i}L_{ik}g^{il} = \sum_{i}L_{ki}g^{il}$$
ここで、$L_{ij}$は第二基本形式の係数、$[g^{kl}]$は第一基本形式係数行列の逆行列である。行列で表すと、
$$ \begin{bmatrix} {L^{l}}_{k} \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} {L^{1}}_{1} & {L^{1}}_{2} \\ {L^{2}}_{1} & {L^{2}}_{2} \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} g^{li} \end{bmatrix} \begin{bmatrix} L_{ik} \end{bmatrix} $$
説明
定義におけるマイナス記号は便宜のために存在する。
バインガルテン・マップは、それぞれの点$p$において、各接ベクトル方向への$\mathbf{n}$の変化率を測る作用素として理解できる。この理由で、形状作用素shape operatorとも呼ばれる。
定義により$L$は$T_{p}M$を$\mathbb{R}^{3}$へ送る写像と定めたが、実際は$T_{p}M$へ送る写像となることが確認できる。
つまり、${L^{l}}_{k}$は$L(\mathbf{x_{k}})$の$l$番目の基底の係数である。すなわち、基底$B = \left\{ \mathbf{x}_{1}, \mathbf{x}_{2} \right\}$に対する座標ベクトルで表せば、以下のようになる。 $$ L(\mathbf{x}_{k}) = {L^{1}}_{k}\mathbf{x}_{1} + {L^{2}}_{k}\mathbf{x}_{2} $$ $$ \left[ L(\mathbf{x}_{k}) \right]_{B} = \begin{bmatrix} {L^{1}}_{k} \\ {L^{2}}_{k} \end{bmatrix} $$ したがって、$L$の行列表現は、以下のようになる。 $$ [L]_{B} = \begin{bmatrix} {L^{1}}_{1} & {L^{1}}_{2} \\ {L^{2}}_{1} & {L^{2}}_{2} \end{bmatrix} $$ また、第一基本形式の性質により、以下が成り立つ。 $$ L_{ij} = \sum_{l}L_{il}\delta_{lj} = \sum\limits_{l,k} L_{il}g^{lk}g_{kj} = \sum\limits_{l,k} L_{li}g^{lk}g_{kj} = \sum\limits_{k}{L^{k}}_{i}g_{kj} $$
$L$が有限次元ベクトル空間間の線形変換であるため、$\tr{L}$と$\det(L)$は不変量であり、これをそれぞれ平均曲率、ガウス曲率と呼ぶ。
Richard S. Millman and George D. Parker, Elements of Differential Geometry (1977), p125 ↩︎