サンプリング定理
📂フーリエ解析サンプリング定理
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物理的なシグナル fが時間 t1<t2<t3<⋯に従って測定されているとしよう。f(t1),f(t2),…を知っていたとしても、一般には任意の f(t) の値を知ることはできない。しかし、ここでシグナル fが特定の範囲内の周波数のみを含むと仮定してみよう。つまり、ある定数 Ωよりも小さい周波数のみを含むシグナル fを考えるわけだが、このような fを 帯域限定シグナルband-limited signal, 周波数限定シグナルと呼ぶ。
フーリエ解析の言葉で言うと、f^(ω)が ∣ω∣≥Ωの領域では関数値が全て 0であるというのと同じことだ。
したがって、fが帯域限定である条件は f^(ω)=0 for ∣ω∣≥Ωという条件と同等であり、f^∈L1を意味する。このような条件の下では、以下のような強力な定理が成立する。
定理
f∈L2であり、f^(ω)=0 for ∣ω∣≥Ωであると仮定する。すると、f(t)は nπ/Ω(n=0,±1,±2,…)の値から決定される。つまり、以下が成立する。
f(t)=n=−∞∑∞f(Ωnπ)Ωt−nπsin(Ωt−nπ)
説明
これを サンプリング定理sampling theoremと呼ぶ。サンプリング定理は、可算個の関数値 f(Ωnπ)だけで全ての tに対する f(t)を決定できる条件を提供する。
信号解析の観点からサンプリング定理を見ると、f^(ω)=0 for ∣ω∣≥Ωという条件は信号 fの周波数が限定されているということと同じだ。
一方、周波数関数 f^∈L2と時間限定シグナルtime-limited signal f(t)に対しても同様の式が成立する。
周波数サンプリング定理
f^∈L2であり、f(t)=0 for ∣t∣≥Lであると仮定する。すると f^(ω)は nπ/L(n=0,±1,±2,…)の値から決定される。つまり、以下が成立する。
f^(ω)=n=−∞∑∞f^(Lnπ)Lω−nπsin(Lω−nπ)
証明は時間サンプリング定理と同じだ。
証明
f^∈L1であるため、f^はフーリエ級数で表現可能である。f^(ω)は [−Ω,Ω]で定義されているため、複素フーリエ級数は以下のようになる。
f^(ω)=−∞∑∞c−ne−inπω/Ω(∣ω∣≤Ω)
証明過程での便宜のために、nを −nと表記した。係数 c−nは以下のようになる。
c−n=2Ω1∫−ΩΩf^(ω)einπω/Ωdω=2Ω1∫−∞∞f^(ω)einπω/Ωdω=Ωπ2π1∫−∞∞f^(ω)eiω(nπ/Ω)dω
f^(ω)=0 for ∣ω∣≥Ωであるため、f^(ω)∈L2であり、フーリエ逆変換定理により以下が成立する。
f(t)=2π1∫−∞∞f^(ω)eiωtdω
したがって、以下の式を得る。
c−n=Ωπ2π1∫−∞∞f^(ω)eiω(nπ/Ω)dω=Ωπf(Ωnπ)
これを (eq1)に代入すると、以下を得る。
f^(ω)=−∞∑∞c−ne−inπω/Ω(∣ω∣≤Ω)=−∞∑∞Ωπf(Ωnπ)e−inπω/Ω(∣ω∣≤Ω)
再びこれを (eq2)に代入すると、以下の式を得る。
f(t)=2π1∫−∞∞f^(ω)eiωtdω=2π1∫−ΩΩf^(ω)eiωtdω=2Ω1∫−ΩΩ−∞∑∞f(Ωnπ)e−inπω/Ωeiωtdω
関数空間では、内積が定積分で定義され、内積が連続であるために極限を外に出すことができるので、上記の式は以下のようになる。
f(t)=2Ω1∫−ΩΩ−∞∑∞f(Ωnπ)e−inπω/Ωeiωtdω=2Ω1⟨−∞∑∞f(Ωnπ)e−inπω/Ω,e−iωt⟩=2Ω1−∞∑∞⟨f(Ωnπ)e−inπω/Ω,e−iωt⟩=2Ω1−∞∑∞∫−ΩΩf(Ωnπ)e−inπω/Ωeiωtdω=2Ω1−∞∑∞f(Ωnπ)∫−ΩΩe−inπω/Ωeiωtdω
上記の積分を計算すると、以下のようになる。
∫−ΩΩe−inπω/Ωeiωtdω=∫−ΩΩei(Ωt−nπ)ω/Ωdω=i(Ωt−nπ)/Ωei(Ωt−nπ)ω/Ω−ΩΩ=i(Ωt−nπ)/Ω1[ei(Ωt−nπ)−e−i(Ωt−nπ)]=(Ωt−nπ)/Ω22iei(Ωt−nπ)−e−i(Ωt−nπ)=(Ωt−nπ)/Ω2sin(Ωt−nπ)
代入して整理すると、以下のようになる。
f(t)=2Ω1−∞∑∞f(Ωnπ)∫−ΩΩe−inπω/Ωeiωtdω=2Ω1−∞∑∞f(Ωnπ)(Ωt−nπ)/Ω2sin(Ωt−nπ)=−∞∑∞f(Ωnπ)Ωt−nπ2sin(Ωt−nπ)
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