相対性理論とローレンツ変換
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相対性理論は、電磁気学の完成から始まる。電磁気学が完成したということは、マクスウェルが電場と磁場に関する4つの偏微分方程式を完成させたということと同じである。マクスウェルの方程式から、電磁波の速度が光速と同じであることがわかった。これにより、以下の2つの事実を得る。
- 光は電磁波である。
- 光の速度はである。
しかし、ここで古典物理学では説明できない問題が生じる。
- 光は波であり、波は媒質が必要だが、光の媒質は何か?
- 光の速度はなぜ一定なのか?
これを説明するために多くの努力があり、エーテルに関する理論もその一つである(古代ギリシャ哲学のエーテルとは異なるものである)。宇宙空間をエーテルが満たしていると仮定するならば、エーテルが光の媒質となる。光の速度が媒質であるエーテルに対する速度であるとするならば、速度が一定であることも解決される。
しかし、エーテル理論はそれらしく見えたが、マイケルソン-モーリーMichelson-Morleyの実験により、宇宙空間を満たす光の媒質は無いことが明らかになった。そして、遂に1905年、アインシュタインがこの問題を解決する「相対性理論」を発表する。正確には特殊相対性理論である。後に一般相対性理論も発表する。特殊」の言葉から特殊相対性理論が何か特別なもの、良いものだと思うかもしれないが、全く逆である。特殊相対性理論はある特殊な状況でのみ適用される理論という意味であり、全ての状況について説明することはできない。
驚くべきことに、アインシュタインは新しい事実を既存の理論に当てはめようとしなかった。衝撃的にも、アインシュタインは光は伝播するための媒質が必要なく、その速度はどの観測者によってもと見られると仮定して始める。つまり、古典物理学でおかしいと思われていたことを真実として受け入れて始めるのである。すでに相対性理論を真実として学んでいる私たちと異なり、その時代の物理学者にとっては本当に驚くべきことだったろう。
光の速度が常にである場合、古典物理学で使用されていたガリレイ変換を使用することはできない。しかし、ガリレイ変換が完全に間違っているわけではない。動く物体の速度が光速に比べて無視できるほど小さい場合、ローレンツ変換はガリレイ変換に近づく。つまり、ガリレイ変換はローレンツ変換の特別な場合に該当し、私たちが生きている現実世界では非常によく当てはまる。
また、ローレンツ変換にローレンツLorentzの名前が入っている理由は、当然ローレンツが作成したからである。しかし、ローレンツは相対性理論のようなものを知らず、単にマクスウェル方程式によく当てはまる座標変換を作ろうとしていたという。つまり、アインシュタインが直接ローレンツ変換を作ったわけではなく、ローレンツが作ったものを見て相対性理論のアイデアを得たというわけである。
定義
慣性座標系と、これに対して軸方向にの速度で動く慣性座標系の間のローレンツ変換は以下の通りである。
このときであり、である。
説明
ローレンツ変換から知ることができる事実をいくつか整理してみよう。
系の速度、つまりが光の速度に比べて非常に小さい場合、ローレンツ変換はガリレイ変換に近似する。我々が経験する現実のほとんどの場合であり、これがまだニュートン力学を学ぶ理由である。
ローレンツ因子の範囲はからである。の時であり、最小値minimumである。の時である。
物体は光の速度より速く動くことができない。ローレンツ変換では、であるが、分母をよく見るとルートが含まれている。ルート内の値は常に以上でなければならないため
慣性座標系間の相対速度は、決して光の速度を超えることができない。つまり、光の速度より速く動くことは不可能だということである。