行列のスミス標準形
📂位相データ分析行列のスミス標準形
定義
PID、すなわち主イデアル領域 R が与えられたとする。行列 A∈Rm×n に対して、以下を満たす d1,⋯,dr∈R と 可逆行列 P∈Rm×m、Q∈Rn×n が存在する場合、 PAQ∈Rm×n を A のスミス標準形smith Normal formという。
PAQ=d1000⋮00⋱00⋮000dr0⋮00000⋮0⋯⋯⋯⋯⋱⋯0000⋮0∈Rm×n
ここで、d1,⋯,dr は R の中で 0 でなく、d1∣⋯∣dr である必要がある。つまり、dk=0 は dk+1 の因子divisorでなければならない。
例
逆行列が複雑に見えるかもしれないが、実際には ガウスの消去法 を通して得ることができる。公式に使う表現ではないが、例を読みやすくするため、行列の右側にどのような操作を行ったかを示すことにする。r− は行row、c− は列column、−x は交換exchange、−e は消去elimination、−+ は該当の係数を乗じて足す操作だ。
もちろん、ガウスの消去法を通して計算することは、計算の面で賢明ではないかもしれない。手計算するときは、こんな風にも解けるんだなという程度に参考にしておこう。
整数環 Z
[243−11−1]∼∼∼∼[1−13−124][1−10206][100206][100200]cx(1,3)ce(1→2,3)re(1→2)ce(2→3)
ここで、1∣2 に注意せよ。
多項式環 Q[x]
x0−121002xx+1∼∼∼∼∼∼∼∼∼x0−1210x2xxx+12−121000x2x+1−112000x1202x+1−100x1002x−3−100x1000x−3−100x10001x−30−x010001x−300x(x−3)10001000x(x−3)c+(1→3,1)re(3→1,2)rx(1,2)cx(1,2)re(1→2)ce(1→2)rx(2,3)c+(2→3,x)r+(2→3,−(x−3))
解説
注意すべきことは、与えられた 主イデアル領域 R が 体 であるとは限らず、一般には割り算が許されず、PID が ベズー領域 であることを利用して消去を行わなければならないことである。
結論
存在性と一意性
R が 主イデアル領域 である場合、すべての 行列 A∈Rm×n に対してスミス標準形が一意に存在する。このときの一意性は dk の 単元倍を考慮しない。
証明
具体的にスミス標準形を求めるアルゴリズムを通じて示される。
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参考