数理統計学におけるデルタ法
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定理
定数θ∈Rと確率変数のシーケンス{Yn}n∈Nについて、n(Yn−θ)が正規分布N(0,σ2)に分布収束するとしよう。
1次のデルタメソッド
g′(θ)=0が存在すれば、
n[g(Yn)−g(θ)]→DN(0,σ2[g′(θ)]2)
2次のデルタメソッド
g′(θ)=0でありg′′(θ)=0が存在すれば、
n[g(Yn)−g(θ)]→Dσ22g′′(θ)χ12
一般化されたデルタメソッド
あるknについてnに依存するkn(Yn−θ)→DYとする。もし
- k∈[r−1]に対してg(k)(θ)=0
- g(r)(θ)=0が存在
- g(r)がθで連続
ならば、
knr[g(Yn)−g(θ)]→Dr!g(r)(θ)Yr
- →Dは分布収束を意味する。
- χ12はカイ二乗分布を表す。
- g(k)はk次の導関数だ。
- [r−1]はr−1までの自然数を集めた集合{1,⋯,r−1}だ。
説明
デルタメソッドdelta methodは、数理統計学で多くの分布収束を説明する補助定理として広く使われる。
例
例えばXの平均と分散を知っている時、
g(X)=g(μ)+g′(μ)(X−μ)
であれば、
Eg(X)≈Varg(X)≈g(μ)[g′(μ)]2VarX
だ。元々Xの逆数に関する平均と分散が気になるなら、関数g(x):=1/xについて次のような結果が得られる。
EX1≈VarX1≈μ1[μ1]4VarX
これが正確なデルタメソッドの結果ではないが、確率変数の関数形を扱うことができる道具として、いつでもデルタメソッドを思い出せるべきだ。
証明
戦略:本質的にはテイラー展開とスルツキーの定理で終わる。
スルツキーの定理:定数a,bと確率変数An,Bn,Xn,Xについてan→Pa、Bn→Pb、Xn→DXならば、
An+BnXn→Da+bX
一般化されたデルタメソッドの証明は省略する。
1次のデルタメソッドの証明
Yn=θの近くで、g(Yn)はlimYn→θR→0の余項Rを持つ、
g(Yn)=g(θ)+g′(θ)(Yn−θ)+R
g(θ)を左辺に移動してnを掛けると、
n[g(Yn)−g(θ)]≈g′(θ)n(Yn−θ)
そして、スルツキーの定理により証明が終わる。
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2次のデルタメソッドの証明
同様に、Yn=θの近くで、g(Yn)はlimYn→θR→0の余項Rを持つ、
g(Yn)==g(θ)+g′(θ)(Yn−θ)+2g′′(θ)(Yn−θ)2+Rg(θ)+0⋅(Yn−θ)+σ2σ22g′′(θ)(Yn−θ)2+R
再び、g(θ)を左辺に移動してnを掛けると、
n[g(Yn)−g(θ)]≈σ22g′′(θ)σ2/n(Yn−θ)2
そして、標準正規分布の平方がカイ二乗分布χ12に分布収束することで、スルツキーの定理により証明が終わる。
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