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伊藤の公式とマルチンゲール表現定理 📂確率微分方程式

伊藤の公式とマルチンゲール表現定理

定理 1 2

確率空間 $( \Omega , \mathcal{F} , P)$ と フィルトレーション $\left\{ \mathcal{F}_{t} \right\}_{t \ge 0}$ が与えられて、ウィーナー過程 $\left\{ W_{t} \right\}_{t \ge 0}$ が $\mathcal{F}_{t}$-適応されているとする。

イトーの定理

$f \in \mathcal{L}^{2} (P)$ の場合、次を満たす唯一の確率過程 $X (t,\omega) \in m^{2}(0,T)$ が存在する。 $$ f (\omega) = E (f) + \int_{0}^{T} X(s, \omega) d W_{s} $$

マルチンゲール表現定理

すべての $t \ge 0$ に対して、$f_{t} \in \mathcal{L}^{2} (P)$ であり、確率 $P$ に対する$\mathcal{F}_{t}$-マルチンゲールであれば、すべての $t \ge 0$ に対して次を満たす唯一の確率過程 $X (t,\omega) \in m^{2}(0,t)$ が存在する。 $$ f_{t} (\omega) = E \left( f_{0} \right) + \int_{0}^{t} X(s, \omega) d W_{s} $$

解説

$\mathcal{L}^{p} (\mu)$ は、ルベーグ測度 $\mu$ の下で $\displaystyle \int_{\Omega} \left| f \right| ^{p} d \mu < \infty$ を満たす関数 $f$ を集めた ルベーグ空間 である。与えられた確率空間 $( \Omega , \mathcal{F} , P)$ では 確率 $P$ もまた測度 として扱われるため、上記の命題では $f \in \mathcal{L}^{2}(P)$ は $P$ に関して積分可能な関数であり、従って $F$ の期待値 $\displaystyle E(f) = \int_{\Omega} f d P$ のような表記が登場することができた。

イトーの定理は固定された時間 $T$ に関する定理であり、マルチンゲール表現の定理はすべての $t \ge 0$ に関するものであることに注意しよう。一方で $f_{t}$ が $\mathcal{F}_{t}$-マルチンゲール であることは、$f_{t}$ が $\mathcal{F}_{t}$-適応されつつ次を満たしていることを意味する。 $$ \forall t \ge s \ge 0, E \left( f_{t} | \mathcal{F}_{s} \right) = f_{s} $$ この定義によると、マルチンゲール表現定理で登場する期待値は必ずしも $E \left( f_{t} \right)$ である必要はなく、$E \left( f_{0} \right)$ でも十分であることが確認できる。


  1. Øksendal. (2003). Stochastic Differential Equations: An Introduction with Applications: p51~53. ↩︎

  2. Panik. (2017). Stochastic Differential Equations: An Introduction with Applications in Population Dynamics Modeling: p126~127. ↩︎