logo

行列の定義 📂行列代数

行列の定義

定義1

数を次のように長方形の形に並べたものを行列matrixという。

$$ A=\begin{bmatrix} 10 & 0 & 3 \\ 0 & 8 & 22 \end{bmatrix} $$

並べた各々の数をエントリーentryまたは要素elementと呼ぶ。横の列をrow、縦の列をcolumnという。また、ある行列が$m$行と$n$列を持つ場合、その行列のサイズを$m \times n$と表す。

上の例では、行列$A$は2行と3列を持ち、サイズは$2\times 3$である。ここで注意すべき点は、$\times$が乗算を意味するわけではないということである。サイズは必ず総行数と列数が明らかになるように$2\times 3$のように表記しなければならず、絶対に$6$と書いてはいけない。ちなみに'$2 \times 3$行列'は [ツーバイスリー行列]と読む。

表記法

行列は主に下のように角括弧[]または丸括弧()で表記されるが、どちらの表現も一般的に見られる。ただし、手で書くときは丸括弧を使うとキレイに書きにくい。また、2次元、3次元空間の座標を表記するときとは違い、成分と成分の間にカンマ(,)を書かないのが基本である。

$$ A=\begin{bmatrix} 10 & 0 & 3 \\ 0 & 8 & 22 \end{bmatrix} \quad A=\begin{pmatrix} 10 & 0 & 3 \\ 0 & 8 & 22 \end{pmatrix} $$

通常、行列は大文字で、成分は小文字で表記する。例えば、行列$A$の1行目3列目の成分は$3$であり、次のように表記される。

$$ a_{13}=3 $$

最初の下付き添え字は行の位置を、2番目の下付き添え字は列の位置を示す。同様に、$i$行目、$j$列目の成分が$a_{ij}$である行列を$\begin{bmatrix} a_{ij} \end{bmatrix}$のように表記する。$A$の$(i,j)$成分は$[A]_{ij}$と表記される。

$$ A = \begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} a_{ij} \end{bmatrix},\qquad [A]_{ij} = a_{ij} $$

すべての$m\times n$行列の集合を次のように表記する。

$$ M_{m \times n} $$

サイズが$m\times n$で成分が実数$\mathbb{R}$、複素数$\mathbb{C}$の行列の集合は、それぞれ次のように表記される。

$$ M_{m\times n}(\mathbb{R}),\quad M_{m \times n}(\mathbb{C}) $$

もう少し抽象的に、成分が$F$の$n \times n$行列の集合を$M_{m \times n}(F)$と表記する。

列ベクトルと行ベクトル

ベクトルとは、数を横または縦に並べたものをいう。この点を考えると、ある行列は列ベクトルまたは行ベクトルを並べたものと見ることができる。例として続けて使用されてきた行列$A$を見てみよう。

$$ A= \begin{bmatrix} 10 & 0 & 3 \\ 0 & 8 & 22 \end{bmatrix} $$

$A$の各列は列ベクトル$\begin{bmatrix} 10 \\ 0 \end{bmatrix}$、$\begin{bmatrix} 0 \\ 8 \end{bmatrix}$、$\begin{bmatrix} 3 \\ 22 \end{bmatrix}$で構成されていると考えられる。または、各行が行ベクトル$\begin{bmatrix} 10 & 0 & 3 \end{bmatrix}$、$\begin{bmatrix} 0 & 8 & 22 \end{bmatrix}$で構成されていると見ることができる。


  1. Jim Hefferon, Linear Algebra(4th Edition). 2020, p15 ↩︎