ベクトル値関数の積分
定義1
$f_{1}$, $f_{2}$, $\dots$, $f_{k}$が区間$[a,b]$で実数値をとる関数だとしよう。そして$\mathbf{f} : [a,b] \to \mathbb{R}^{k}$が次のように定義されているとする。
$$ \mathbf{f}(x)=\left( f_{1}(x),\dots,f_{k}(x) \right),\quad x\in [a,b] $$
この時、各$f_{k}$が区間$[a,b]$で可積分であれば、$\mathbf{f}$の積分を次のように定義する。
$$ \int _{a} ^{b} \mathbf{f}dx = \left( \int _{a} ^{b}f_{1} dx, \dots, \int _{a} ^{b}f_{k} dx \right) $$
定理
$f : [a,b]\to \mathbb{R}$を満たす関数に関して以前に整理した内容がそのまま成立する。
微分積分学の基本定理2
ベクトル値関数$\mathbf{f}, \mathbf{F} : [a,b] \to \mathbb{R}^{k}$について、$\mathbf{f}$が可積分であり、$\mathbf{F}^{\prime}=\mathbf{f}$が成立するとしよう。すると次の式が成立する。
$$ \int _{a} ^{b} \mathbf{f}(t)dt = \mathbf{F}(b)-\mathbf{F}(a) $$
積分の絶対値は絶対値の積分より小さい
$$ \begin{equation} \left| \int _{a} ^{b} \mathbf{f}dx \right| \le \int _{a} ^{b} \left| \mathbf{f} \right| dx \label{eq1} \end{equation} $$
証明
$\mathbf{f}=\left( f_{1},\dots,f_{k} \right)$とすると、次が成立する。
$$ \left| \mathbf{f} \right| =\left( f_{1}^{2}+\cdots +f_{k}^{2} \right)^{1/2} $$
積分は線形であり、関数の積は可積分性を保存するので、各$f_{i}^{2}$とそれらの和も可積分である。また、$x^{2}$がコンパクト集合$[a,b]$で連続なので、$x^{1/2}$も連続であり、連続ならば可積分である。連続関数の合成は可積分性を保存するので、次が成立する。$\left| \mathbf{f} \right|$は可積分である。
$\eqref{eq1}$を示すために、次のようにしよう。
$$ \mathbf{y} = \left( y_{1},\dots,y_{k} \right) \quad \text{and} \quad y_{i}=\int f_{i}dx $$
すると、次が成立する。
$$ \mathbf{y} = \left( y_{1},\dots,y_{k} \right) = \left( \int f_{i}dx, \dots, \int f_{k}dx \right) = \int \mathbf{f}dx $$
さらに、次を得る。
$$ \left| \mathbf{y} \right| ^{2} = \sum \limits _{i=1} ^{k}y_{i}^{2} = \sum \limits _{i=1} ^{k}y_{i}\int f_{i}dx = \int \left( \sum \limits _{i=1} ^{k}y_{i}f_{i} \right) dx $$
すると、コーシー・シュワルツの不等式により、次が成立する。
$$ \sum \limits _{i=1} ^{n} y_{i}f_{i}(t) \le \left| \mathbf{y} \right| \left| \mathbf{f}(t) \right|, \quad a\le t \le b $$
すると、$\left| \mathbf{y} \right| \ne 0$の時、次が成立する。
$$ \begin{align*} && \left| \mathbf{y} \right| ^{2}\le \int \left| \mathbf{y} \right| \left| \mathbf{f} \right| dx \\ \implies && \left| \mathbf{y} \right| \le \int \left| \mathbf{f} \right|dx \\ \implies && \left| \int \mathbf{f}dx \right| \le \int \left| \mathbf{f} \right|dx \end{align*} $$
もちろん、$\left| \mathbf{y} \right| =0$の場合は自明に成立する。
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ウォルター・ルーディン, 数学分析の原理 (3版, 1976), p135-136 ↩︎