ベンディクソンの判定法
ベンディクソンの判定法
空間$\mathbb{R}^{2}$と関数$f,g \in C^{1} \left( \mathbb{R}^{2} \right)$について、次のようなベクトル場が微分方程式として与えられているとしよう。 $$ \dot{x} = f(x,y) \\ \dot{y} = g(x,y) $$ 単連結領域$D \subset \mathbb{R}^{2}$で $$ {{ \partial f } \over { \partial x }} + {{ \partial g } \over { \partial y }} \ne 0 $$ の符号が変わらないならば、与えられた$2$次のベクトル場は$D$内部で閉じた軌道を持たない。
- $D \subset \mathbb{R}^{2}$が単連結領域とは、$D$の境界の内側に穴のようなものがないということである。
直感的な説明
式的に$f$と$g$はベクトル場それ自体を指し、システムの発散$\displaystyle {{ \partial f } \over { \partial x }} + {{ \partial g } \over { \partial y }}$はベクトル場自体が変化する様子を表している。ベクトル場自体が変化する様子は、幾何学的にはフローが滞在する領域自体が拡大したり縮小したりすることと見ることができる。これが$0$でなくても符号が変わらないということは、概念的に見て$D$は時間の経過とともにその形が常に不安定になるということである。
証明1
連鎖律により $$ {{ d y } \over { d x }} = {{ d y } \over { d t }} {{ d t } \over { dx }} = {{ g } \over { f }} $$ 両端で$f dx$を上げると $$ fdy = g dx $$ $D$内部で閉じた軌道$\Gamma$が存在すると仮定してみると$f dy - g dx = 0$だから$\Gamma$上では $$ \int_{\Gamma} f dy - g dx = 0 $$
グリーンの定理: $$ \int_{\mathcal{C}} (Pdx + Qdy) = \iint_{S} (Q_{x} - P_{y}) dx dy $$
グリーンの定理に従って $$ 0 = \int_{\Gamma} f dy - g dx = \iint_{D} \left( {{ \partial f } \over { \partial x }} + {{ \partial g } \over { \partial y }} \right) dx dy $$ しかし、領域$D$では$\displaystyle {{ \partial f } \over { \partial x }} + {{ \partial g } \over { \partial y }} \ne 0$の符号が変わらないと仮定したので $$ \iint_{D} \left( {{ \partial f } \over { \partial x }} + {{ \partial g } \over { \partial y }} \right) dx dy \ne 0 $$ でなければならない。これは矛盾であるため、$D$内部で閉じた軌道$\Gamma$は存在しない。
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一般化
デュラックの判定法dulac’s Criterion
単連結領域$D \subset \mathbb{R}^{2}$でスムースな関数$B (x,y)$とし $$ {{ \partial (Bf) } \over { \partial x }} + {{ \partial (Bg) } \over { \partial y }} \ne 0 $$ の符号が変わらないならば、与えられた$2$次のベクトル場は$D$内部で閉じた軌道を持たない。
Wiggins. (2003). Introduction to Applied Nonlinear Dynamical Systems and Chaos Second Edition(2nd Edition): p72. ↩︎