距離空間におけるコンパクト性の条件の重要性
概要
解析学の多くの定理では、コンパクトを必要条件として要求している(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)。証明過程でコンパクトであるという仮定を使うから、「コンパクトなら大丈夫」と自然に受け入れるだろうけど、「コンパクトでないならダメだ」というのには疑問を持つかもしれない。もしコンパクトである条件がなかったら、以下のような良くない状況が起こり得る。
定理1
がコンパクトでない集合だとする。その場合、
(a) で定義された有界でない連続関数が存在する。
(b) で定義された連続で有界だが最大値を持たない関数が存在する。
(c) ここでが有界であるという条件が追加されたとしよう。するとで定義された連続だが一様連続でない関数が存在する。
(a), (b), (c)はそれぞれ’コンパクト距離空間での連続関数は有界’、’最大最小定理’、’コンパクト距離空間での連続関数は一様連続’が成り立つためにはコンパクトである必要があることを示している。
証明
(c)
でのコンパクトの同値条件は閉じており有界であることである。従って、が単に有界だと仮定してみよう。それでは、閉じていないために、に含まれないの集積点が存在する。この点をとしよう。そして、以下のような関数を考える。
分子も分母も連続関数であるため、もでの連続関数である。 明らかに、は有界ではない。さらに、任意の2つの正数、に対して、以下の式を満たすを考える。
しかし、をに十分近く選ぶことで、関数値の差が以下のようによりも大きくなることができる。
したがって、は一様連続ではない。
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(a)
上で使用した記法をそのまま持ってきて、以下のような関数を考える。
すると、はまだで連続であり、であるために有界である。しかし、
であり、であるために、はで最大値を持てない。したがって、が有界であるという条件だけでは不十分であることがわかる。これはが有界である条件で示されたことだ。が有界ですらないと仮定してみよう。すると、
は連続でありながら有界でない関数である。
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(b)
以下を考えてみよう。
すると、それはで連続である。
全てのに対してであるため、は連続で有界だが最大値を持たない関数である。
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Walter Rudin, Principles of Mathmatical Analysis (3rd Edition, 1976), p91-92 ↩︎