解析学における極値の定義と微分係数との関係
定義
$(X,d)$を距離空間としよう。関数$f : X \rightarrow \mathbb{R}$が下記の条件を満たす正の実数$\delta >0$が存在するならば、$f$は点$p \in X$で局所最大値local maximumを持つと言う。
$$ \forall q\in X,\quad f(q)\le f(p)\ \mathrm{with}\ d(p,q)<\delta $$
説明
言葉で説明すると以下の通りだ:
不等号の向きを逆にすると、局所最小値local minimaの定義になる。
$(X,d)$を距離空間としよう。関数$f : X \rightarrow \mathbb{R}$が下記の条件を満たす正の実数$\delta >0$が存在するならば、$f$は点$p \in X$で局所最小値を持つと言う。
$$ \forall q\in X,\quad f(q )\ge f(p)\ \mathrm{with}\ d(p,q)<\delta $$
英語でのlocal maximum/minimumとrelative maximum/minimumは両方とも局所最大/最小を意味する言葉だ。
高校の数学では、極限、連続性、微分を厳密に定義しないので、「微分したときに$0$であり、左右からの微分係数の符号が変わるところ」を局所最大/最小と呼んでいた。解析学では、まず局所最大/最小を定義し、その後で$f$が微分可能であれば、局所最大/最小での微分係数が$0$であることを証明できる。
定理
区間$[a,b]$で定義された関数$f$が与えられたとしよう。$f$が$x\in (a,b)$で局所最大値を持ち、$x$で微分係数$f^{\prime}(x)$が存在するとする。すると、$f^{\prime}(x)=0$が成り立つ。
NOTE: 逆は成立しないことに注意してほしい。つまり、$f^{\prime}(x)=0$と言っても$x$が局所最大値または最小値である保証はない。
証明
局所最小値の場合も証明方法は同じだ。
$f$が$x$で局所最大値を持つと仮定すると、以下のように正の数$\delta$を選ぶことができる。
$$ a<x-\delta < x <x+\delta <b $$
$x$を基準にして$x$より小さい点、大きい点に分けて考えよう。
Case 1.
$x-\delta < t < x$としよう。その場合、次が成り立つ。
$$ \frac{f(t)-f(x)}{t-x} \ge 0 $$
$f(x)$は局所最大値なので、$t\rightarrow x$の極限を取っても符号は変わらない。したがって、微分係数の定義により、次が成り立つ。
$$ \begin{equation} f^{\prime}(x)=\lim \limits_{t\rightarrow x} \frac{f(t)-f(x)}{t-x} \ge 0 \end{equation} $$
Case 2.
$x<t<x-\delta$としよう。その場合、次が成り立つ。
$$ \frac{f(t)-f(x)}{t-x} \le 0 $$
**Case 1.**と同じ理由で、以下の式が成り立つ。
$$ \begin{equation} f^{\prime}(x)=\lim \limits_{t\rightarrow x} \frac{f(t)-f(x)}{t-x} \le 0 \end{equation} $$
$f^{\prime}(x)$は$(1)$と$(2)$の両方を満たさなければならないので、以下を得る。
$$ f^{\prime}(x)=0 $$
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