粒子系の質量中心と線運動量
定義
粒子の集まりを粒子系system of particlesと呼ぶ。
説明 1
質量が$m_{1}$、$m_2$、$\cdots$、$m_{n}$の粒子の位置ベクトルがそれぞれ$\mathbf{r}_{1}$、$\mathbf{r}_{2}$、$\cdots$、$\mathbf{r}_{n}$の時、この粒子系の質量中心center of massを以下のように定義する。
$$ \mathbf{r}_{cm}=\frac{m_{1}\mathbf{r}_{1}+m_{2}\mathbf{r}_{2}+\cdots + m_{n}\mathbf{r}_{n}}{m_{1}+ m_{2}+ \cdots+ m_{n}}=\frac{\sum m_{i}\mathbf{r}_{i}}{m} $$
ここで、$m=\sum \limits_{i}m_{i}$は粒子系の全質量を示している。下付き文字$cm$はcenter of massの略である。それにより、質量中心の速度は自然に以下のように定義される。
$$ \begin{equation} \mathbf{v}_{cm}=\frac{m_{1}\mathbf{v}_{1}+m_{2}\mathbf{v}_{2}+\cdots + m_{n}\mathbf{v}_{n}}{m_{1}+ m_{2}+ \cdots+ m_{n}}=\frac{\sum m_{i}\mathbf{v}_{i}}{m} \label{velocity-of-cm} \end{equation} $$
3次元直交座標系で$\mathbf{r}_{i}=x_{i}\hat{\mathbf{x}}+y_{i}\hat{\mathbf{y}}+z_{i}\hat{\mathbf{z}}$とすると、各座標における質量中心は以下のようになる。
$$ x_{cm}=\frac{\sum m_{i}x_{i} }{m},\quad y_{cm}=\frac{\sum m_{i}y_{i} }{m},\quad z_{cm}=\frac{\sum m_{i}z_{i} }{m} $$
この粒子系の線形運動量は自然に各粒子の運動量の合計として定義される。
$$ \mathbf{p}=\sum \mathbf{p}_{i}=\sum m_{i}\mathbf{v}_{i} $$
それにより、$(1)$によって粒子系の線形運動量は粒子系全体の質量と質量中心の速度の積として表されることが分かる。
$$ \mathbf{p}=\sum m_{i}\mathbf{v}_{i}=m\mathbf{v}_{cm} $$
これでそれぞれの粒子が外部から受ける力が$\mathbf{F}_{1}$、$\mathbf{F}_{2}$、$\cdots$、$\mathbf{F}_{n}$とする。さらに、粒子$i$が粒子$j$から受ける力を$\mathbf{F}_{ij}$とする。そうすると、粒子$i$の運動方程式は以下のようになる。
$$ \mathbf{F}_{i} + \sum \limits_{j=1}^{n}\mathbf{F}_{ij}=m_{i}\ddot{\mathbf{r}_{i}}=\dot{\mathbf{p}_{i}} $$
したがって、粒子系全体に対する力をすべて足すと以下のようになる。
$$ \sum \limits_{i=1}^{n}\mathbf{F}_{i}+\sum \limits _{i=1}^{n}\sum \limits_{j=1}^{n}\mathbf{F}_{ij}=\sum \limits_{i=1}^{n}\dot{\mathbf{p}_{i}} $$
ここで、粒子は自分自身に対しては何の力も及ぼさないので$\mathbf{F}_{ii}=\mathbf{0}$は0である。また、方程式の2番目の項で、$\mathbf{F}_{ij}$と$\mathbf{F}_{ji}$はそれぞれ粒子$i$が粒子$j$に、粒子$j$が粒子$i$に与える力を表しているため、作用・反作用の法則により、これらの大きさは同じだが方向が反対であり、足し合わせると$\mathbf{0}$になる。よって、2番目の項は$\mathbf{0}$である。したがって、粒子系全体の運動方程式は次のようになる。
$$ \sum \limits _{i=1} ^{n} \mathbf{F}_{i}=\dot{\mathbf{p}_{i}}=m\mathbf{a}_{cm} $$
つまり、粒子系では質量中心の加速度は、系全体の質量を持つ一つの粒子が全体の外力を受けた時の加速度と同じである。
Grant R. Fowles and George L. Cassiday, Analytical Mechanics (7th Edition, 2005), p275-277 ↩︎