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変形ベッセル方程式と変形ベッセル関数 📂関数

変形ベッセル方程式と変形ベッセル関数

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以下の微分方程式は、変形ベッセル方程式と呼ばれる。

$$ x^2 y^{\prime \prime} + xy^{\prime}-(x^2-\nu^2)y=0 $$

ベッセル方程式で$y$項の符号が$+ \rightarrow -$に変わった形式だ。この微分方程式の解は、ベッセル方程式である微分方程式の公式によって以下のようになる。

$$ y=Z_{\nu}(ix)=AJ_{\nu}(ix)+BN_{\nu}(ix) $$

一般的に使われる二つの解の形は、変形ベッセル関数と呼ばれており、特に$I_{\nu}$を第一種変形ベッセル関数、$K_{\nu}$を第二種変形ベッセル関数と呼ぶ。

定義

第一種変形ベッセル関数$I_{\nu}$と第二種変形ベッセル関数$K_{\nu}$はそれぞれ次のように定義される。

$$ \begin{align*} I_{\nu}(x)&=i^{-\nu}J_{\nu}(ix) \\ \\ K_{\nu}(x) &= \frac{\pi}{2}i^{\nu+1}\left[ J_{\nu}(ix)+iN_{\nu}(ix) \right] \\ &= \frac{\pi}{2}i^{\nu+1}H_{p}^{(1)}(ix) \\ &=\frac{\pi}{2}\frac{I_{-\nu}(x)-I_{\nu}(x)}{\sin (\nu\pi )} \end{align*} $$

ここで、$J_{\nu}$ $H_{\nu}^{(1)}(x)$はハンケル関数である。

説明

$i$が前に掛けられる理由は、実数$x$に対して$I_{\nu}(x)$、$K_{\nu}(x)$の値が実数になるようにするためである。この状況は、$y^{\prime \prime}+y=0$の解が$\cos x$、$\sin x$であり、$y^{\prime \prime}-y=0$の解が$\cosh x=\cos (ix)$、$\sinh (x)=\sin (ix)$であるものと似ている。方程式のこのような特性のために、$I_{\nu}$と$K_{\nu}$は双曲線ベッセル関数とも呼ばれる。

積分形

2010年にOlverらによって、次のような積分形が知られている1

$$ I_{\nu} (z) = {{ \left( {{ z } \over { 2 }} \right)^{\nu} } \over { \sqrt{\pi} \Gamma \left( \nu + {{ 1 } \over { 2 }} \right) }} \int_{-1}^{1} e^{zt} \left( 1 - t^{2} \right)^{\nu - {{ 1 } \over { 2 }}} dt $$

このような変形ベッセル関数は、数理物理学だけでなく、方向統計学などでも非常に重要であり、空間統計分析でセミバリオグラムの無難な選択肢の一つであるマテーン関数にも登場する。


  1. Sungkyu Jung. “Geodesic projection of the von Mises–Fisher distribution for projection pursuit of directional data.” Electron. J. Statist. 15 (1) 984 - 1033, 2021. https://doi.org/10.1214/21-EJS1807 ↩︎