解析数論におけるリウヴィル関数
定義 1
素数 $p_{1} , \cdots , p_{k}$ と 自然数 $n$ が $n = p_{1}^{a_{1}} \cdots p_{k}^{a_{k}}$ のように表されているとする。以下のように定義された算術関数 $\lambda$ をリウヴィル関数と呼ぶ。 $$ \lambda (n) = (-1)^{a_{1} + \cdots a_{k}} $$
基本性質
- [1] リウヴィル級数: $n$ が完全平方数である場合のみ $1$ であり、それ以外の場合は $0$ である。言い換えると、 $$ \sum_{d \mid n} \lambda (d) = \begin{cases} 1 &, n \text{ is a square} \\ 0 & , \text{otherwise}\end{cases} $$
- [2] 完全乗法性: すべての $m,n \in \mathbb{N}$ に対して $\lambda (mn) = \lambda (m) \lambda (n)$
説明
$$ \begin{matrix} n & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 & 7 & 8 & 9 & 10 \\ \ \lambda (n) & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & 1 \\ \sum_{d \mid n} \lambda (d) & 1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \end{matrix} $$ リウヴィル関数はその定義だけからはどのような関数かよくわからない。これは定義が似ているメビウス関数と同様であるが、興味深いことに、定理[1]の証明過程およびメビウス逆公式にしたがって以下の事実を確認できる。 $$ \lambda^{-1} (n) = \left| \mu (n) \right| , \qquad \forall n \in \mathbb{N} $$
証明
[2]
$$ n = p_{1}^{a_{1}} \cdots p_{k}^{a_{k}} \\ m = q_{1}^{b_{1}} \cdots q_{r}^{b_{r}} $$ 二つの自然数 $m,n$ が上記のように表されているとする。そうすると、リウヴィル関数の定義により、 $$ \lambda (nm) = (-1)^{a_{1} + \cdots a_{k} + b_{1} + \cdots + b_{r}} = (-1)^{a_{1} + \cdots a_{k} }(-1)^{ b_{1} + \cdots + b_{r}} = \lambda (n) \lambda (m) $$
■
[1]
- (2): $f$ が乗法的関数であることと、すべての素数 $p_{1} , \cdots , p_{r}$ とすべての $a_{1} , \cdots, a_{r} \in \mathbb{N}$ に対して $f \left( p_{1}^{a_{1}} \cdots p_{r}^{a_{r}} \right) = f \left( p_{1}^{a_{1}} \right) \cdots f \left( p_{r}^{a_{r}} \right)$ が成り立つことは同値である。
- (6): $f$ が完全乗法的であれば、$F(n) := \sum_{d \mid n} f(d)$ は乗法的である。
もし $g$ が $g(n) := \sum_{d \mid n} \lambda (n)$ のように定義されていれば、定理[2]により$\lambda$ は完全乗法的であるため、補助定理(6)により$g$ は乗法的である。$g$ が乗法的関数であれば、補助定理(2)により$g$ を分解して考えることができるので、固定された素数 $p$ と $a \in \mathbb{N}$ に対して$g \left( p^{a} \right)$ のみを計算すれば十分である。 $$ \begin{align*} g \left( p^{a} \right) =& \sum_{d \mid p^{a}} \lambda (d) \\ =& 1 + \lambda \left( p \right) + \cdots \lambda \left( p^{a} \right) \\ =& 1 - 1 + 1 - 1 + \cdots + (-1)^{a} \\ =& \begin{cases} 0 &, a \text{ is odd} \\ 1 &, a \text{ is even} \end{cases} \end{align*} $$ したがって、$g(n)$ は $0$ と $1$ のみの積として表され、たとえ一つの $p$ に対して$a$ が奇数であれば、$0$ が掛けられて $g(n) = 0$ になる。
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Apostol. (1976). Introduction to Analytic Number Theory: p37. ↩︎