グラフ理論における歩行、道、経路、サイクル
定義 1
グラフ が与えられたとする。
- エッジの有限 シーケンスを ウォークと呼び、以下のように表す。 ここで、 を 始点、 を 終点、 を 長さと呼ぶ。
- ウォークのエッジが全て異なる場合、トレイルと呼ぶ。
- ウォークの頂点が全て異なる場合、パスと呼ぶ。
- ウォークの始点と終点が同じ場合、閉じていると呼ぶ。
- 閉じたパスを サイクルと呼ぶ。
これらの概念は、有向グラフに対しても同様に定義でき、以下のように無限グラフに対しても定義できる。
が無限グラフだとする。以下の定義ではウォークはトレイル、パス、サイクルに置き換えられる。 6. (有限)ウォークは一般的なグラフのウォークと全く同じである。 7. 一方向無限ウォークは次のように定義される。 8. 双方向無限ウォークは次のように定義される。
説明
パスの定義において、始点と終点は例外である。つまり、である場合にはパスとなり、したがって「閉じたパス」が存在することになる。また、パスとトレイルの定義においては、頂点が全て異なればエッジも全て異なるため、パスはトレイルでもある。
サイクルは、簡単に言うと、グラフで見つけることができる「輪の形」で、グラフ理論全体で広く使用される概念である。例として、次の図を見ると、グラフで合計三つのサイクルを見つけることができる:
また、サイクルに関して次の定理が知られている。
定理
有限グラフ の全ての頂点の 次数が 以上であれば、 にはサイクルが含まれる。
証明
がループやマルチプルエッジを持てば当然サイクルが存在するため、は単純グラフと仮定する。
任意の頂点 一つを選び、以下のようなパスを考える。 仮定により、全ての頂点の次数は 以上であるため、少なくとも二つの頂点と隣接している。したがって、 は直前の頂点 に隣接している頂点の中から を除いた任意の頂点を選び続けることができる。しかし、 は有限グラフであるため、いずれはすでにパスに含まれている頂点 を選ばなければならなくなる。そうすると、始点と終点が であるパス は、においてサイクルとして存在することがわかる。
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Wilson. (1970). Introduction to Graph Theory: p27. ↩︎