集合の濃度
定義 1
任意の集合 $X$ に対して、次の性質を持つ $\operatorname{card} X$ を $X$ の濃度cardinalityと定義する。
- (i): $X = \emptyset \iff \operatorname{card} X = 0$
- (ii): $A \sim B \iff \operatorname{card} A = \operatorname{card} B$
- (iii): 何らかの自然数 $k$ について、$X \sim \left\{ 1 , 2, \cdots , k \right\}$ ならば $\operatorname{card} X = k$
特に、有限集合の濃度を有限濃度と言い、無限集合の濃度を超限濃度という。
- 二つの集合 $A$、$B$ において、$A$ が $B$ の何らかの部分集合と等号であるが、$B$ は $A$ のどの部分集合とも等号でない場合、$\operatorname{card} A$ は $\operatorname{card} B$ より小さいと言って、以下のように表示される。 $$ \operatorname{card} A < \operatorname{card} B $$
- 相互に素な二つの集合 $A$、$B$ がそれぞれ濃度 $a = \operatorname{card} A$、$b =\operatorname{card} B$ を持つ場合、その和集合の濃度を**$a$、$b$ の(濃度)和**と言い、以下のように表示される。 $$ \operatorname{card} \left( A \cup B \right):= a+b $$
- 二つの集合 $A$、$B$ がそれぞれ濃度 $a = \operatorname{card} A$、$b =\operatorname{card} B$ を持つ場合、そのデカルト積の濃度を**$a$、$b$ の(濃度)積**と言い、以下のように表示される。 $$ \operatorname{card} \left( A \times B \right):= ab $$
- 二つの集合 $A$、$B$ がそれぞれ濃度 $a = \operatorname{card} A$、$b =\operatorname{card} B$ を持つ場合、定義域 $A$ と値域 $B$ を持つ全ての関数の集合 $B^{A}$ の濃度を**$b$ の $a$ (濃度)乗**と言い、以下のように表示される。 $$ \operatorname{card} \left( B^{A} \right):= b^{a} $$
説明
濃度は「集合のサイズ」を抽象化したもので、無限集合に対しても数学的に意味のある比較をするために導入されたと考えても差し支えない。集合のサイズから来た概念であるため、集合論が核でないか、便宜上 $|X| := \operatorname{card} X$ のように簡潔に表示されることもある。
濃度は自然数に似た以下のような代数的性質を持つ。
基本性質 1
$x,y,z$ を濃度と仮定する。
- [1]: $$|A| \le |B| \land |A| \ge |B| \implies |A| = |B|$$
- [2]: $$x + y = y+x \\ (x+y) + z = x + (y + z)$$
- [3]: $$xy = yx \\ (xy)z = x(yz) \\ x ( y+z) = xy + xz$$
- [4]: $$z^{x} z^{y} = z^{x+y} \\ \left( z^{y} \right)^{x} = z^{yx}$$