ヤコビの公式
📂多変数ベクトル解析ヤコビの公式
公式
A=A(t)を微分可能な行列関数とする。行列式detA(t)の導関数は次の通りである。
dtddetA(t)=Tr((adjA(t))dtdA(t))=detA(t)⋅Tr(A−1(t)dtdA(t))
これをヤコビの公式Jacobi’s formulaという。全微分の形で書くと次のようになる。2番目の等号はAが可逆行列のとき成立する。
d(detA)=Tr((adjA)dA)=detA⋅Tr(A−1dA)
adjは随伴行列、Trはトレース、dAは行列微分素を意味する。
証明
簡単にA=A(t)と表記し、A=[Aij]としよう。行列のラプラス展開は次の通りである。
detA=j∑Aij[adjA]jifor fixed i
行列式をn2変数を持つ多変数関数det(A)=F(A11,A12,…,Ann)と見なすと、その全微分は次のようになる。
d(detA)=i,j∑∂Aij∂FdAij
偏微分を計算すると次のようになる。
∂Aij∂F=∂Aij∂(k∑Aik[adjA]ki)=k∑(∂Aij∂Aik[adjA]ki+Aik∂Aij∂[adjA]ki)=k∑∂Aij∂Aik[adjA]ki+k∑Aik∂Aij∂[adjA]ki=[adjA]ji+k∑Aik∂Aij∂[adjA]ki
ところで余因子の定義を考えると、全てのkについて[adjA]kiはAijを含まないので、Aijに関する偏微分は0である。
∂Aij∂F=[adjA]ji(1)
したがって次を得る。
d(detA)=i,j∑[adjA]jidAij=i∑j∑[adjA]jidAij=j∑[(adjA)dA]jj=Tr((adjA)dA)
3番目の等号は行列の積の表現によって、4番目の等号はトレースの定義によって成立する。dAは行列微分素である。
一方で、Aが可逆行列ならばadjA=(detA)A−1であり、Tr(kA)=kTr(A)ので次を得る。
d(detA)=Tr((adjA)dA)=Tr((detA)A−1dA)=detATr(A−1dA)
一方で、dtd(detA)は連鎖律により次のようになる。
dtd(detA)=dAd(detA)⋅dtdA
(1)によりdAd(detA)=(adjA)Tであり、AB=Tr(ATB)なので、
dtd(detA)=(adjA)TdtdA=Tr((adjA)dtdA)=detA⋅Tr(A−1dtdA)
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